「中国資本が火葬料を釣り上げている」は本当か 東京博善の社長に聞いた、“風評被害”の実態:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
火葬料金の値上げが話題になっている東京博善だが、なぜこのタイミングで「夕刻葬」に踏み切ったのか。社長に聞いてみると……。
100年以上続く火葬インフラ
野口社長の思いを聞いて、筆者は大正期の関東大震災のエピソードを思い出した。震災発生時、町屋斎場も被災し、東京博善は大きな損害を受けたが、亡くなった多くの人たちを放置するわけにもいかないということで、従業員らはボランティアで火葬業務を続けた。自分自身や家族も被災者であるにもかかわらず、だ。
「都民が困っているときこそ火葬を止めてはいけない」――。その企業理念は令和になっても健在だ。東京博善は、1999年に東京都が策定した「東京都広域火葬実施計画」に基づき、都と協定を結んでいる。現在も都や区と連携し、災害発生時に多数の死者が出た場合を想定し、遺体を誰が搬送するのか、どこに安置するのか、通常の火葬業務を行いながら、被災者をどのように受け入れるのかといった協議を進めているという。
「火葬料金については東京都から調査票もいただきましたし、これから調査が進んでいくと思います。東京博善としても全面的に協力します」(野口社長)
100年以上にわたり火葬インフラを担い続けてきた東京博善は、「夕刻葬」という新しい葬送文化も模索している。他の公営火葬場のように「公金」が投入されていくのか、今後の動向に注目したい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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