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「中国資本が火葬料を釣り上げている」は本当か 東京博善の社長に聞いた、“風評被害”の実態スピン経済の歩き方(6/7 ページ)

火葬料金の値上げが話題になっている東京博善だが、なぜこのタイミングで「夕刻葬」に踏み切ったのか。社長に聞いてみると……。

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「中国資本が料金を釣り上げている」は本当か

 背景はさておき、こうしている今も「中国資本が料金を釣り上げている」という主張がネットやSNSで広まっている現状について、野口社長には忸怩(じくじ)たる思いがあるという。

 「火葬現場でがんばってくれている従業員たちに対して申し訳ない思いがありますよ。中国資本と言われても、現場で働いている人々には何も関係ない。それなのに業者さんや周囲からいろいろなことを言われて、本人はもちろん家族も非常に辛い思いをしているのではないかと心配しています」(野口社長)

 このような「風評被害」について、本連載ではたびたび警鐘を鳴らしてきた。例えば、衆議院議員・河野太郎氏の親族が経営する「日本端子」がネットやSNSで「河野一族が中国共産党に媚(こび)を売って、太陽光発電利権を得るための会社」と攻撃され、従業員やその家族が苦しんだことがある。しかし、以下の記事を読んでいただくと分かるようにこれは「デマ」で日本端子は太陽光発電事業すらしていなかった。


日本端子はゴリゴリの「日本メーカーの下請け」だった(出典:公式Webサイト)

 「そんなささいな問題より、中国資本が大事なインフラを握っていることのほうが重要なのが分からないのか」という愛国者の皆さんからのお叱りが飛んできそうだが、この業界でいえば、そういう「風評被害」を広めれば広めるほど「大事なインフラ」が崩壊していく。

 先ほどの経済産業省データでも、2024年の「葬儀師、火葬係」の有効求人倍率は7.5で、全産業の有効求人倍率1.5に比べて圧倒的に高い。このような「成り手不足業界」の有名企業を「中国のスパイだ」なんだとネットやSNSで広めたら、どんな未来が待ち受けているのか説明はいらないだろう。

 「具体的な数字は控えますが、なかなか採用が難しく、人材が定着しないことに苦労をしています。火葬炉は1300度近くにもなるので、炉裏はすごい暑さの中の重労働ですし、においも体や衣服につきます。家族のためにシャワーを浴びて帰る人もいます。

 そんな大変な仕事の中でもがんばってくれているのは、“これは社会に必要で誰かがやらなくてはいけない仕事だ”という使命感や誇りからです。中国資本でもうけていると主張される方は少しでもいいので、そういう必死な思いで働いている現場の人たちがいることも知っていただきたい」(野口社長)

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