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なぜ、鉄道会社は「子ども」に投資するのか 小田急の施策から読み解く長期戦略(2/3 ページ)

2023年、小田急電鉄が発表した「子ども料金50円」は大きな衝撃だった。なぜ鉄道各社は「子ども」の獲得に精を出すのか?

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他社でも広がり 子育て世代向けの施策の数々

 子育て世代をターゲットとする施策は、首都圏を中心に他社も取り組みを進めている。

 電車の設備面では、2017年に運転を開始した西武鉄道の40000系が先がけだ。この電車は先頭の10号車の一部を「パートナーゾーン」と命名。通常の座席を設けず、床面を広く取って座席は腰掛け程度とし、ベビーカーやスーツケースなどの大きな荷物を持ち込みやすくした。


西武鉄道が同社初となる「パートナーゾーン」を設置(画像:西武鉄道プレスリリースより)

 2026年1月末に運転を開始する予定の新型通勤車両・京王電鉄2000系にも、5号車の一部に大型のフリースペース「ひだまりスペース」が設けられている。大きい窓を設置し、小さな子どもでも外を眺めやすくした。

 子育て応援の取り組みは、運賃や車内の環境整備にとどまらない。近年の「座席指定制列車」の運転拡大もその一つといえるだろう。追加料金を支払うことで、指定された席に座れるサービスだ。

 首都圏の朝夕の通勤・通学ラッシュに子連れで乗り合わせるのは極めて厳しい。座席の確保や子どもの体調不良など、親の苦労は絶えない。数百円の料金で快適な移動が確約されるサービスは一定のニーズが期待できる。

 小田急電鉄のロマンスカーも親子連れを重要な顧客層として位置付けている。1960年代には座席指定制の観光特急の側面が強かったが、1970年代に入ると東京都心への通勤需要も生まれた。座席指定制のため、車内が過密になることもなく、快適な移動が約束されている。


小田急電鉄のロマンスカー(画像:筆者撮影)

 先述の西武40000系も、2人掛け座席を備える座席指定制列車「S-TRAIN」向けの編成があり、東京メトロや東急東横線まで直通運転している。通勤・通学だけでなく、「子育て世代でも電車に乗りやすい」環境づくりの一つとなっている。

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