JCBはなぜ「最大10%」をシンプルにしたのか 条件だらけの還元競争に向き合った一手(2/3 ページ)
クレジットカードのポイント還元競争が複雑さを増す中、JCBは最大10%還元の新ポイント制度で「シンプル」を打ち出した。なぜ条件をそぎ落とす戦略を選んだのか。競合比較とネットの反応から、その狙いと限界を探る。
なぜ「シンプル」を選んだのか
念のため、競合の状況を整理しておく。
Oliveは、対象店舗で最大20%還元をうたう。ただしスマホのタッチ決済が必須で、カードでの支払いは対象外。家族のカードをひもづける「家族ポイント」、SBI証券との連携、Vポイントアッププログラムの達成など、条件を積み上げてようやく最大値に届く設計だ。
エムットはさらに手強い。アプリに月1回ログインで+0.5%、月5万円以上利用で+0.5%、三菱UFJ銀行で給与受取+1%、三菱UFJダイレクトにログイン+1%、日経電子版やAppleのサブスク登録で最大+5%……。専門サイトですら「分かったような、分からないような」と評するありさまだ。
こうした中、新ポイント制度で巻き返しを図るJCBの販売促進部、石谷佳昭次長に話を聞いた。
「いろいろと条件を組み合わせて最大20%、というところも最近は多いですよね。ただ、お客さまにとっては分かりにくかったり、達成が難しかったり。われわれはシンプルに、簡単にお得を提供したかった」
カードで支払っても、スマホ決済でも、ゴールドでも一般カードでも、JCBなら10%還元は変わらない。
「ポイントって、カードを選ぶうえで最も基本的な基準だと思うんです。あまりに複雑な条件を設けすぎると、分かりやすさが阻害される」
とはいえ、完全に手放しではない。店舗ごとに、最初に1回だけ「ポイントアップ登録」が必要になる。なぜか。
「スタバと別のコーヒーチェーンが並んでいたときに、『あ、スタバをポイントアップ登録したな』と。少しでも意識に残してもらいたいんです」
加盟店への送客効果を狙った設計だ。SNS上では「いちいち登録が面倒」という声もあるが、石谷氏は「ボタンを押すだけ。1回だけです」と強調した。
正論だ。ただ、正論がそのまま通るほど商売は甘くない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
3万円払っても欲しい? ATMでは使えないのに人気沸騰のメタルカード
JCBが2024年10月に発行した招待制カード「ザ・クラス」が注目を集めている。ATMでは利用できず、発行手数料も3万3000円と高額。それでも発行後わずか2カ月で想定を上回る申し込みがあるという。
年会費9万9000円で「買えないものを買う」 どういうこと? 富裕層カードの知られざる世界
富裕層向け最上位カード「Visa Infinite」が打ち出すのは、“買えない体験”を商品化する戦略だ。限定イベントや特別サービスを通じ、アクセスそのものに価値を持たせる仕組みを読み解き、ポイント経済圏の新たな潮流を追う。
住信SBI、ランク制度大改定 勝者と敗者がくっきり分かれるワケ
住信SBIネット銀行が2026年5月に「スマートプログラム」を大改定する。クレカ・アプリ利用者は優遇縮小、一方給与受取層はメリット拡大。銀行は顧客選別を進め、収益性重視の経営にかじを切ったようだ。
ポイ活の“改悪ラッシュ”はなぜ起きる? 企業とユーザーのプロレス的な関係
企業が条件を絞るたびに「改悪だ」と炎上するポイ活界隈。しかし両者は対立しているようで、実は話題作りで利害が一致する“プロレス関係”にも見える。改悪ラッシュの裏側を読み解く。

