クルマの正月飾りはなぜ廃れたのか 季節感が薄れた時代のクルマ文化:高根英幸 「クルマのミライ」(2/4 ページ)
正月飾りを付けているクルマをほとんど見かけなくなった。車両構造やデザインの進化に加え、人々の価値観や宗教観の変化も大きい。新車の初売りやカー用品のラインアップにも変化があり、季節感はどんどん薄れている。
正月飾りが似合わないクルマへと変化
そもそも正月飾りは、大工職人の副業的要素が大きかった。降雪地帯の建築職人は冬季、現場仕事がなくなるため、こうした手仕事で副収入を得たとも言われている。
ところが現代では、建築工法の発展や作業服の多機能化、気候変動、人手不足などもあって、1年を通して現場仕事が存在する。昔ながらの手仕事を手掛ける大工職人も減り、正月飾りなどを露天で販売する姿を見かけることもほとんどなくなった。
地方によってはまだあるのかもしれないが、首都圏では、正月飾りは雑貨店やドラッグストア、ホームセンターなどに置かれているのを見かけるくらいだ。しかも、従来クルマ用だった縦長のものはなく、玄関ドアなどに取り付けられる小さなリース状の飾りしか置いていない店もある。
一方、鏡餅などの室内用の正月飾りはコンビニやスーパー、ホームセンター、ドラッグストアなど幅広い小売店でたくさん売られていることから、正月飾りにそれなりの需要はあると思われる。日本人の最近の傾向として、宗教のプライバシー化が進んでいるという見方もある。
冒頭に書いた通り、クルマにおいても昔はフロントマスクに正月飾りを施したクルマを見かけたが、最近はほとんど見ない。
クルマにおいては、スタイリングデザインの変化も大きな影響を与えている。立派なフロントグリルが備わっていた昭和のクルマには、そこに正月飾りが追加されても違和感はない。むしろ格調高く、厳かな気持ちにさせてくれた。
ところが近年のクルマは、スラント(傾斜)させたフロントマスクが一般的になった。空気抵抗を軽減するためだ。フロントグリルも、バンパー下のアンダーグリルのみのクルマが増えている。
そもそもラジエターグリルがなければ、正月飾りを取り付けるのも難しい。クルマとして似合わないだけでなく、走行風で塗装部分に飾りがこすれれば、塗装面にキズがつく可能性もある。
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