クルマの正月飾りはなぜ廃れたのか 季節感が薄れた時代のクルマ文化:高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)
正月飾りを付けているクルマをほとんど見かけなくなった。車両構造やデザインの進化に加え、人々の価値観や宗教観の変化も大きい。新車の初売りやカー用品のラインアップにも変化があり、季節感はどんどん薄れている。
ディーラーの「初売り」にも変化
自動車産業と正月といえば、販売店の初売りセールも最近はあまり見かけなくなった。もちろん積極的な販売店もまだ存在するが、納期が長引く傾向の今、年明けから積極的にクルマを買おうというユーザーも多くはなさそうだ。
ボーナスを頭金にして分割払いでクルマを購入するのであれば、ディーラーは年末までに登録できるクルマを販売したいから、年明けに納車できるクルマを優先して販売するだろう。
年末や年度末は登録台数、すなわち業績に影響するので、販売店もメーカーも一生懸命だが、半導体不足や海外需要の拡大などもあって、国内向けの供給は絞り込まれている。ユーザーが値引きよりも納期短縮を望み、ディーラーの収益性改善にも寄与しているから、市場が縮小傾向(昨年は前年より微増だったようだが)にあるディーラーやメーカーにとっては悪いことばかりではなさそうだ。
ディーラーは正月休み明けの週末に初売りセールと銘打ったイベントを展開する。しかし、来店プレゼントや店内の飾り付けに正月らしさを感じさせるだけで、販売するクルマに変化はない。値引きや納期も特別変わらないところが多い(筆者撮影)
ガソリンスタンドも、セルフ式が主流になったことで24時間営業が増え、年末に洗車して燃料を満タンにしておく必要はさほどなくなった。それでも新年を気持ちよく迎えたいドライバーは洗車するので、コイン洗車場や自動洗車機などは年末に混雑する。
以上のように、クルマに正月飾りが施されなくなった背景には価値観の変化、車両構造やデザインの進化、そして宗教観の変容といった複数の要因が複雑に絡み合っている。この風習の衰退は、日本社会が伝統を失ったという単純な話ではなく、時代に応じて生活文化の形を変化させてきた結果であるといえるだろう。
2026年元日の首都高速・大黒PA。たくさんのクルマが集まる中で、正月飾りが施されたクルマは4、5台程度。それもカスタムのアクセサリーが、正月らしさを演出する小道具のようなアイテムとして利用されているものだった(筆者撮影)
それと同様に、クルマとオーナーの関係性も変わってきた。以前は点検や洗車、ワックスがけなど、自分で手間をかけるオーナーが一般的であったが、時短や多機能を重視する傾向が強まっている。
これは共働きの増加や可処分所得の減少と無関係ではないだろう。クルマにかける時間や予算が減っていくことにもつながるのだ。つまり、人々に余裕がなくなったことも正月飾りがなくなった一因なのである。
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