クルマの正月飾りはなぜ廃れたのか 季節感が薄れた時代のクルマ文化:高根英幸 「クルマのミライ」(4/4 ページ)
正月飾りを付けているクルマをほとんど見かけなくなった。車両構造やデザインの進化に加え、人々の価値観や宗教観の変化も大きい。新車の初売りやカー用品のラインアップにも変化があり、季節感はどんどん薄れている。
シーズンフリー、メンテナンスフリーが加速
カーケミカル用品、特に洗車用品はオールインワンの商品がそろっている。カーシャンプーもシンプルな洗浄成分だけのものは少なく、水あか対策やコーティングなどを同時にできる多機能型が主流だ。
単機能の高級品もネット通販を中心に人気を集めているが、それらは洗車マニアとでもいうべき“こだわり派”のユーザーが支持するアイテムで、一般のドライバーはなるべく洗車を時短化したいのである。
「フクピカ」に代表されるウエットティッシュタイプの洗車クロスも、ボディの汚れ落としとコーティングができるだけでなく、窓ガラスや室内の専用品のほか、クルマの内外装に広く使える万能タイプも登場している。
塗装面の保護については、ガソリンスタンドやディーラー、洗車専門店などでボディコーティングするユーザーも増えている。洗車やボディを磨く手間を省くだけでなく、長期間ボディの光沢を維持して塗装面を保護できるから、リセール時にも効いてくる。
タイヤも、オールシーズンタイヤの雪道性能が高まったことで、降雪地帯でなければ冬タイヤに履き替える必要がなくなってきている。エンジンオイルも、マルチグレードで低粘度化が進んだため、1年を通して同じ粘度のオイルを使うケースが増えた。
カーシェアリングが普及してきた近年では、クルマのメンテナンスフリー化がますます求められるようになった。EVが普及して保管スペースに充電器が取り付けられれば、燃料補給やオイル交換などのメンテナンスが不要になる。エアフリータイヤを装着してパンクのリスクもなくなれば、車検以外は掃除くらいしか日頃のメンテナンスがいらなくなる。
クルマがシーズンフリー、メンテナンスフリーになっていくのは正常な進化といえる。昔はクルマのオーナー自身が対応していたトラブルもすべてプロ任せになり、ロードサービスの需要も高まっている。
自動車税制が見直される動きが出ているのは、自動車業界にとっては朗報といえるだろう。ただ、こうした負担軽減はあくまで経済面の話であり、クルマをどう扱うかという生活者の意識や習慣とは別の問題だ。
クルマの維持費負担が軽減されたからといって、クルマに正月飾りが復活することはなさそうだ。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
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