「昔はもっと働いた」と言う人が見落とす視点 労基法改正見送りで問われる“高密度”労働の限界(3/3 ページ)
2026年は40年ぶりとなる労働基準法の改正が行われる予定でした。しかし昨年末、厚生労働省は労基法の改正案を2026年通常国会へ提出することを見送るとしました。予定されていた改正内容について触れるとともに、なぜ直前になって提出が見送られたのか、そして企業への影響について社会保険労務士が解説します。
中小企業経営者は、ホッとしている?
労基法改正案の提出見送りを受け、胸をなでおろしている中小企業の経営者は多いのではないでしょうか?
勤務間インターバル制度が義務化されると、終業時刻から次の始業時刻までに11時間の間隔を空けなければなりません。午後11時まで残業した翌日は、午前10時以降にならないと業務に就くことができなくなります。昨今の人手不足により、中小企業では今まで以上に少人数で業務を回す必要がありますので、立ち行かなくなる企業もあるでしょう。
一方で、副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直しが延期されたことは痛手でしょう。法改正となれば、定時以降や週末だけ勤務する社員を雇用するコストを抑制できたからです。
改正が「見送り」となったわけではない
労基法改正の時期が延期されることで、当面、社内の就業ルールの改正や就業規則の改訂などを行う必要はなくなりました。ただし現状のままでいいのかというと、そうとも言い切れません。
本記事で解説した労基法の改正は、見送られたわけではなく、継続して検討され、来年以降に施行される可能性もあります。高市首相の方針も、あくまで心身の健康維持と従業員の選択を前提にしており、やみくもに労働時間規制の逆をいくものではありません。
「働き方改革が日本経済を駄目にした。昔の日本人はもっと働いていた」と主張する人がいますが、チャットツールの普及などにより、業務の密度は、以前と比較できないほど濃くなっています。社員の健康を維持するためにも、労基法改正を待たず勤務間インターバル制度の導入や勤務終了後の社員への業務連絡の禁止などは検討した方が良いでしょう。
著者プロフィール
佐藤敦規(さとう あつのり)
社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。
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