「昔はもっと働いた」と言う人が見落とす視点 労基法改正見送りで問われる“高密度”労働の限界(2/3 ページ)
2026年は40年ぶりとなる労働基準法の改正が行われる予定でした。しかし昨年末、厚生労働省は労基法の改正案を2026年通常国会へ提出することを見送るとしました。予定されていた改正内容について触れるとともに、なぜ直前になって提出が見送られたのか、そして企業への影響について社会保険労務士が解説します。
残り4つの改正ポイントとは?
(4)有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化
有給休暇取得時の賃金の算定方式は、
- 平均賃金方式:有給以前3か月間にその労働者に支払われた賃金の総額を総日数(暦日数)で除した金額
- 通常賃金方式
- 標準報酬日額方式:毎月の給与から決まる社会保険料の「もとになる月額」を、1日当たりの金額に日割りしたもの
の3種類があり、企業はいずれかを選べました。ですが、改正案では「通常賃金方式」を採用しなければならなくなります。
(5)つながらない権利に関するガイドラインの策定
労働時間外に会社からの業務上のメールや電話への応答を拒否できる権利です。「勤務時間外にどのような連絡までが許容でき、どのようなものを拒否できるかといった社内ルールを労使で検討していくことが必要」として、ガイドラインの策定が提言されています。
(6)副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し
副業・兼業者の割増賃金の算定において、本業先と副業・兼業先の労働時間通算ルールを適用しない方向で検討しています。
現在では、労働者が副業または兼業した場合の労働時間が1週40時間または1日8時間を超える場合は、後から雇用した企業が残業扱いとして通常賃金の1.25倍の賃金を支払う必要があります。法改正後は通常の賃金(時給)を支払えば済むことになります。ただし健康管理のため労働時間の通算管理は必要です。
(7)法定労働時間週44時間の特例措置の廃止
一定の要件を満たす事業場では、法定労働時間週44時間の特例が認められていましたが、この特例措置が廃止されます。
改正内容は「働き方改革」を推進させるためのもの
ここまで列挙したうち、「(6)副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し」以外は、いずれもワークライフバランスの実現を目指すものです。つまり「働き方改革」を進化させる内容になっています。
特に「(5)つながらない権利に関するガイドラインの策定」は、労働者の精神的な休息を確保するために、不可欠なものでしょう。タイムカード上での残業時間が減っても、LINEやSlackなどのツールで勤務終了後に上司から連絡がくるとしたら気が休まらないからです。
高市早苗総理大臣は「ワークライフバランスを捨てる」という自身の決意表明に留まらず、心身の健康維持と従業員の選択を前提とした上で、労働時間の抑制にストップをかけるように厚生労働省に求めていました。労基法の改正案の提出見送りの背景には、高市首相の考えが反映されたと思われます。
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