サーモンはどうやって寿司市場を制したのか:寿司ビジネス(1/3 ページ)
1980年代、日本で生食されていなかったサーモンが寿司ネタへと転換した。養殖技術の進化と現場の気付き、そしてノルウェーの輸出戦略が重なり、いまや定番となったサーモン寿司の誕生と、その裏にあるビジネスの構図をたどる。
寿司ネタの中でも世界的に最も人気があると言っても過言ではない「サーモン」を題材に、寿司ビジネス全体を眺めていきます。回転寿司を中心に広く使われ、国や世代を問わず支持されているサーモンは、現代の寿司を象徴する存在です。まずは、その成り立ちからのぞいていきましょう。
今や定番となったサーモンの寿司ですが、実は日本の寿司文化の中に、最初から存在していたわけではありません。今や当たり前のように目にするサーモン寿司は、比較的新しい存在なのです。
日本では長い間、鮭をはじめとするサケ科の魚は、「加熱して食べるもの」として親しまれてきました。サケ科の魚には寄生虫のリスクがあると考えられており、生で食べることは避けられてきたのです。北海道のルイベや、富山のます寿司のように、冷凍したり酢で締めたりといった加工を施した食べ方はありましたが、生の切り身を刺身や寿司で食べる習慣は一般的ではありませんでした。
つまり、日本の寿司に「生サーモン」がなかったのは、好みの問題ではなく、安全性を考慮した食文化の積み重ねだったのです。
この常識が大きく動き出したのが1980年代です。ノルウェーでは当時、養殖サーモンの生産量が急増していました。しかし、国内だけでは消費しきれず、新たな輸出先を探していたのです。そこで注目されたのが、魚の消費が盛んな日本市場です。そこで寿司ネタとして使われれば、高い付加価値が付く。ノルウェー政府はそう判断し、日本市場への売り込みを本格化させていきます。
試食会や展示会を通じて、「ノルウェーのサーモンは生で食べても安全だ」という点を伝え、日本での販路を広げていきました。
この経緯から、「サーモン寿司はノルウェー政府が日本に売り込んだことで広まった」という話が、広く知られるようになります。
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