サーモンはどうやって寿司市場を制したのか:寿司ビジネス(2/3 ページ)
1980年代、日本で生食されていなかったサーモンが寿司ネタへと転換した。養殖技術の進化と現場の気付き、そしてノルウェーの輸出戦略が重なり、いまや定番となったサーモン寿司の誕生と、その裏にあるビジネスの構図をたどる。
しかし、ここまでの話だと「ノルウェー政府はどうやって日本の寿司市場に注目するに至ったのか」「元々生食をしていないノルウェーの人々が生食という発想に本当に至るのか」などという謎が残ります。ここで登場するのが1人の日本人です。
その人物とは、大手水産専門商社である中島水産の副社長も務めていた崎浦利之氏です。実は崎浦氏は大学時代の私の恩師の1人でもあり、『魚ビジネス』に記した内容が世に出た際、「おめぇさん、それは違うよ。サーモンの生食を広めたのはこの俺だ」とお電話をいただきました。
これは私がご本人から聞いた話なのですが、崎浦氏は、ノルウェー政府から頼まれたこともあり、ノルウェーを訪れて現地のサーモン養殖の様子を見て回り、技術指導をしていたそうです。
その中でサーモンを育てていると、水質がキレイなこともあり、寄生虫もほとんど見られないことに気が付きます。
「これなら、生で食べられるのではないか」
そう考え、実際に検査をしてみたところ、生食でも問題がないことが分かります。そして、試しに食べてみるとおいしく、周りの人たちにも食べてもらっても評判が良い。「これは、売れるのではないか」という考えに至ったそうです。
崎浦氏は、そのサーモンを日本に持ち帰り、魚売り場で刺身として販売します。そして、思った通りサーモンの刺身はよく売れたと言います。このような過程の中で「日本では、寿司や刺身として使える魚は高く評価される」という日本独自の市場感覚をノルウェーの関係者も感じていたのでしょう。
これが、後にノルウェー側の戦略を生み、サーモンを寿司ネタとして売り込む動きにつながっていったものと考えられます。
言い換えれば、サーモン寿司の始まりは、日本人の現場での気づきにあり、それを後からノルウェーの養殖会社や政府が国家レベルで広げていった、という流れになります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
高級寿司と回転寿司は何が違うのか 同じ魚なのに“味に違い”があるワケ
1食何万円もする高級な寿司もあれば、1食1000円以内で済んでしまう回転寿司のような安い寿司もあります。同じ寿司であるのに、なぜここまで差が生じてしまうのでしょうか。
同じ魚でも値段が違うのはなぜ? 普通のサバと関サバで10倍ほどの差
同じ魚でも値段が違うのはなぜでしょうか。スーパーで売られているサバは、安い時なら1尾400円ほどで買えますが、ブランドサバの「関サバ」ともなれば、1尾4000円以上もしますが、なぜ?
「サンマが食べられなくなる」は本当か よく言われる要因は3つ
漁業の世界では、「魚が獲れなくなった」という話をよく耳にします。ここのところ続いている「サンマの不漁」については……。
豊洲市場に人が集まっているのに、なぜ築地場外市場は今もあるのか
豊洲市場には、日々人が集っています。一方、築地場外市場にもたくさんの人が集まっています。豊洲市場移転の際、「築地がなくなる」という声を聞いたことがあるような……。
「新鮮な魚」「とれたて」をアピールする店が、信用できない理由
