レジなし店舗「Amazon Go」撤退が、「失敗」ではないこれだけの理由: がっかりしないDX 小売業の新時代(4/4 ページ)
2026年1月27日、そのAmazonが「Amazon Go」とスーパーマーケット「Amazon Fresh」の全72店舗を閉鎖すると発表しました。この事実を「失敗」とだけ捉えるのは短絡的です。
次の一手
Amazonの次の一手は明確です。今後数年でWhole Foods Marketを100店舗以上、新規出店する計画を公表しました。小型都市フォーマットのWhole Foods Market Daily Shopも、2026年末までに5店舗から10店舗に拡大。さらに、イリノイ州オーランドパークには22万9000平方フィート(約2万1300平方メートル)のスーパーセンター型新業態を計画しています(CNBC, 2026年1月9日)。Walmartスーパーセンターの平均面積である17万9000平方フィートを上回る規模で、食料品、日用品、一般商品を扱い、配達ドライバーのピックアップ用の倉庫機能も併設する予定です。
つまりAmazon Go、Amazon Freshの撤退は食品小売からの撤退ではないということです。「自社ブランドの実験店舗」という手段の撤退であり、食品小売という事業領域ではむしろ投資を拡大しているのです。
技術が解決したものと、しなかったもの
Amazonの実験と並行して、世界各地でレジレス、無人店舗が登場しました。筆者は2019年にサンフランシスコのStandard MarketやZippin、上海のLePickやコンテナ型無人店舗を視察体験しました。
これらの体験を通じて明確になったのが「レジレス」と「無人」の本質的な違いです。
中国で一時流行したコンテナ型無人店舗は、自動販売機の延長線上にある仕組みでした。WeChatやAlipayのQRコードでコンテナのロックを解除し、商品はセルフレジでバーコードスキャンまたはRFIDタグで自動登録、最後にセルフレジで決済する。無人であることのメリットは人件費の抑制ですが、Amazon Go同様の商品自体の魅力不足以外に、機械トラブルへの対応の遅れ、商品への質問ができない不便さといったデメリットが伴います。
一方、Amazon Goをはじめとした、無人ではないレジレス店舗の多くには店員が配置されています。商品の補充やトラブル対応、そしてフレンドリーな接客を提供。技術が代替したのはレジ作業であり、むしろ人ならではの役割に余裕ができたのです。
象徴的な光景を目にしたのは、ニューヨークの空港売店です。この店舗はAmazonが外販するJWOテクノロジーを採用しており、クレジットカードで入店する仕組みでした。
ベビーカーを押した女性が入店しようとクレジットカードをタッチしましたが、ゲートが邪魔でうまく入店できませんでした。すると、店内で補充作業をしていた女性従業員が歩み寄って声をかけ、ゲートを手で押さえて入店をサポートしました。そして入店後に何か困ったことがあったら声をかけてほしいというニュアンスの言葉をかけていました。
参考:効率追求の落とし穴 「レジなし店舗」が見逃しがちな重要ポイントとは?
こういった買い物客のサポートをする人がいる店舗といない店舗、どちらが魅力的でしょうか。答えは明白です。技術がレジ作業を代替したからこそ、人は人にしかできない役割に注力できるのです。
Amazonの10年間の実店舗実験で技術が確実に解決したものが2つあります。レジ待ちの時間ロス・不公平感・接遇不満という顧客不満の構造的解消と、オフラインでの購買行動のデータ化です。
一方、技術だけでは解決できなかったものもあります。品ぞろえや商品力という来店動機の根幹、大型店舗でのコスト効率、物理的な棚のパーソナライズ、そして「人がいることの価値」をどう設計するかという問題です。これらは技術の問題ではなく、事業設計と組織判断の問題です。
後編では、視点を技術から組織に移し、Amazonが撤退をどう次の投資に変換したかを分析します。その上で、日本企業のPoCがなぜ同様の学習サイクルを回せないのかを考察します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「Adobe不要説」は本当か? AI機能から無料アプリAffinity V3の“現実的な乗り換え”案を考えてみた
総合クリエイティブツール「Affinity」は、Canvaによる買収後、2025年秋に無料で利用できる形へと大きく舵を切った。PhotoshopやIllustratorに近い機能を備えていることから、「Adobeの代替ツール」として注目されている。
【1カ月使って分かった】AIブラウザ「ChatGPT Atlas」、乗り換え前にやっておきたい4つの設定
米OpenAIが2025年10月に提供を開始した「ChatGPT Atlas」は、ChatGPTを中核に据えて作られたAIブラウザだ。約1カ月メインブラウザとして使ってきた筆者の経験を踏まえ、AIブラウザの恩恵を受けるためにやっておきたい4つの設定について解説する。
スキャナアプリ「Microsoft Lens」終了へ 代わりに使いたい4つのサービスを徹底比較
紙の書類をスマホでデジタル化できる「Microsoft Lens」が提供を終了し、2025年12月15日以降は使用できなくなる。今後は何を使えばいいのだろうか? 後継となりうるスキャナアプリを比較した。
設定が難しい? でも慣れれば最強――Claudeの「スキル」で定型業務を自動化する方法
2025年10月からClaudeの有料プランで利用可能になった「スキル」は、ユーザーが独自にワークフローを作成できる仕組み。指定した処理を実行したり、それを指定の形式で出力したりできる。そのまま使えるプロンプトと共に、文書作成を楽にするスキル作成の手順を紹介する。
Copilot関数でデータ整理を一瞬に! 不ぞろい表記を“秒”で統一する方法
Excelデータの整理には、2025年8月から試験提供が開始されているExcelの「Copilot関数」が便利だ。従来の関数では扱えなかったテキスト情報を、AIを使ってセル内で扱えるようになる。
Notion AIで情報集約の効率が爆上がり! 初心者に優しいAI機能とは?
日々の業務で扱うさまざまな情報がさまざまなツールに散らばってしまい、管理が煩雑になっている――。そんなときに役立つのがNotionだ。AIによる便利な機能も登場している。情報管理や集約に役立つNotionのAI機能の魅力を解説する。
