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「山田くんに100円振り込んで」話しかけるだけで完了 住信SBI銀行、5人の若手が内製したAIエージェントの裏側(3/4 ページ)

住信SBIネット銀行が2月27日にベータテストを始めるAIエージェント「NEOBANK ai」は、声やチャットで指示するだけで振込や家計分析ができる。開発したのはわずか5〜6人の若手エンジニアだ。

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「ガンダムの第1話」――5人の若手が内製で作り上げるまで

 NEOBANK aiの初期構想が生まれたのは2024年10月。当初はベンダーへの外注を想定していた。しかし見積もりを取ってみると、金額がまるで合わない。執行役員の半田英二氏は「世の中にないものを作ろうとすると、ベンダーさんからしてもたくさん積んでおかないと不安になる。読めない見積もりになった」と振り返る。


執行役員 半田英二氏

 そんな中、転機は社内にあった。住信SBIネット銀行では、残高や明細を照会する「参照系」と、振込などお金を動かす「更新系」の両方について、外部から呼び出せるAPI(プログラム間の接続口)の整備が進んでいた。ならば自分たちでどこまでできるか試してみよう――。若手エンジニアを中心とした5〜6人のスモールチームが動き始めた。デモを披露した田村氏が、開発の中心を担った。

 最初にできたのはAI手続き案内の機能だった。同社のアプリはログイン時にFIDO認証(スマートフォンの顔認証や指紋認証を使った本人確認の仕組み)を採用している。認証を通過した時点で本人確認は済んでいる。であれば参照系だけでなく、更新系のAPIも呼び出せるのではないか。実際に試すと動いた。半田氏はその経緯を「ガンダムの第1話みたいだった。マニュアルを読んでいたら動き出してしまった」と表現する。「こいつ、動くぞ!」というわけだ。吉岡翼氏も「ある日突然、更新系のAPIも動きましたと報告が来た。振込ができている。おお、すげえじゃんと」と当時を振り返る。

 開発はアジャイルで回した。「こういう機能があったらいいよね」というアイデアをすぐにプロトタイプにし、良ければそのまま実装に反映させる。小さなサイクルを高速で繰り返した。2025年7月にはサービスとして成立する確信を持ち、10月の経営会議で初めてトップ層にお披露目した。「経営陣もびっくりしていた」と半田氏は振り返る。社長の後押しを受け、12月の記者会見で構想を発表。ベータテスト募集にこぎつけた。

 機能をまとめて発表したのには訳がある。「AI手続き案内だけだと『FAQの検索ね』で終わってしまう。振込ができる、家計の分析ができるという体験を最初に届けたかった」。AIに任せれば何でもできるという印象を、初手で持ってもらう狙いがあった。

「AIが銀行取引する」不安にどう応えるか

 AIが振込を実行する――。一般の利用者が不安を覚えるのは自然なことだろう。開発チームはその点をどう設計で解消したのか。

 まず前提として、NEOBANK aiが使うAPIは、従来のアプリ画面の裏側で動いているものと同一である。利用者がボタンをタップして入力していた操作を、生成AIが代行しているにすぎない。関氏は「Webの画面でお客さんが入力して指示しているものと、生成AIを介して値を渡して実行するものと、プロセスは同じだ」と説明する。

 加えて、AIが一方的に取引を完了させない設計を徹底した。振込であれば、AIが送金先と金額を提示した後、必ず「この内容でよいですか」という確認画面が表示される。最終的な実行ボタンを押すのは人間である。この原則はすべての更新系の機能に共通している。

 安全性への配慮はモデル選定にも及ぶ。LLM(大規模言語モデル)は特定のモデルに依存せず、複数の基盤モデルを使い分けている。生成AIにはもっともらしい誤りを生成する「ハルシネーション」のリスクが伴うが、田村氏は「回答の範囲を銀行サービスに絞り込み、判断できない質問には答えないようにするなど、ガードレールはしっかり作っている」と話す。

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