人口減でも利用者1.6倍、広告等の収益6000万円 茨城の「ローカル鉄道」の地域に根差した戦略(3/4 ページ)
赤字体質に陥りやすいローカル線の中で、好成績を上げている鉄道が茨城にある。ひたちなか海浜鉄道だ。人口減が進む中で、利用者数は1.6倍、広告収益は6000万円に上る。どのような戦略なのか?
ローカル鉄道に広告出稿 なぜ?
それに加え、ひたちなか海浜鉄道の特徴として見逃せないのが「広告」だ。ローカル鉄道に活気があるかどうかを見極めるうえで、全国の鉄道を取材してきた筆者が重視しているポイントでもある。広告は効果があってこそ出稿されるものだ。売上増はもちろん、知名度や好感度、信頼性の向上も期待される。
ひたちなか海浜鉄道では、導入間もない元JR東日本の3両を除く6両のうち、5両が車体全体を広告で覆う「ラッピング車」となっている。広告料金は1両あたり年間50万円(税抜き)だ。
吉田社長は「当初は『地元の新しい鉄道会社だから応援しよう』という姿勢からの出稿でした」と振り返る。現在の在籍車両で最初にラッピングが施されたのは、2010年の同社2周年記念「アニマルトレイン」だった。転機となったのは、2014年に登場した、テレビ東京系アニメ『デュエル・マスターズ』とのタイアップ車あたりからだろう。
その後、2016年以降は茨城県内のクリーニング会社や自動車整備会社、非鉄金属メーカーなどの出稿が続いた。ご祝儀の域を越え、「宣伝効果の大きい媒体として認められた結果だと考えています。現在ラッピングしていない車両にも、すでに引き合いが来ています」と吉田社長は話す。
さらに2017年7月、著名な建設機械メーカーである「小松製作所(コマツ)」がラッピング車両を出稿し、話題となった。吉田社長によれば、同社はひたちなか市内に主要工場を持つものの、製造する機械は大型で、そのまま港から海外へ輸出されるため、地元との接点が見えにくいという。そこで地域との結び付きを強める手段として、ひたちなか海浜鉄道への出稿に至った。
「当社にとっても、安定した広告収入はありがたいですし、地元企業の宣伝のお役にも立てている。Win-Winの関係を築けていると感じています」(吉田社長)
運輸省(現・国土交通省)が定める「鉄道事業会計規則」では、広告収入は旅客運輸収入とは別に「運輸雑収」として計上される。開業初年度の2008年度決算では、その全てが広告ではないものの、運輸雑収は約5339万円だった。
その後は6000万円台を計上する年度も増え、2024年度は6313万円に達した。旅客運輸収入がコロナ禍を除けば年間2億円前後であることを考えると、運輸雑収の占める割合は小さくない。
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