ソニーは、なぜレコードを捨てなかったのか 7年ぶり新プレーヤー投入の背景(2/5 ページ)
ソニーが7年ぶりにレコードプレーヤーの新製品を投入した。ストリーミングが主流の時代でも、なぜ同社はレコード事業を続けてきたのか。拡大するアナログ市場の実態や、若年層に広がる新しい音楽体験を担当者に聞いた。
LP盤の売れ筋も「名盤」から「新譜」に
ソニーがレコードプレーヤーの新商品を発売した背景の一つに、市場の拡大がある。日本レコード協会によると、2025年の国内アナログレコード生産金額は、1988年以来37年ぶりに80億円を超えた。数量・金額ともに5年連続のプラス成長で、この流れは欧米を中心に世界的なトレンドとなっている。
三浦さんは「10年前はLP盤の売り上げランキング上位のほとんどが往年の名盤だった。今は、トップ20のうち名盤は1〜2枚で、ほとんどが新譜」と指摘する。海外に目を向けると、テイラー・スウィフトやレディー・ガガなど、人気アーティストがLP盤を積極的に発売するようになり、購買層の若年化も後押ししている。
アーティスト側の意識の変化もあるという。数年前までは、デジタル版の数カ月後にLP盤を出すのが一般的だったが、現在はほとんどのアーティストが同時発売に切り替えている。「アーティスト側がLPをおまけではなく、ファンに思いを届ける大事なツールとして捉えるようになっている」(三浦さん)
こうした市場環境の変化に加え、新モデルの開発を後押ししたのが前モデル(PS-LX310BT、希望小売価格4万2900円)の異例ともいえる売れ方だった。
通常、ホームオーディオ製品は発売直後に売り上げのピークを迎え、その後は緩やかに下降する。しかし前モデルは年を追うごとに伸び続け、購買層もZ世代を中心に若年層へ広がっていた。
実際、ソニーの2024年度におけるレコードプレーヤー売上高は、2019年比で約2倍に伸び、2025年度も計画比を上振れる見込みで推移するなど好調だ。1機種では需要をカバーしきれないと判断し、ターゲットを分けた2機種の投入に至った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
えっ、CDプレーヤーが売れている? エスキュービズムの戦略が面白い
ポータブルタイプのCDプレーヤー市場が面白いことになっている。市場が縮小していくなかで、新興メーカーのエスキュービズムが発売したところ、ある層を中心に売れているのだ。「CDプレーヤーなんてオワコンでしょ」と言われているなかで、どういった人たちが購入しているのか。
殻を捨てた「ザク」が、20万個以上売れている秘密
バンダイが発売しているガシャポン「ザク」が売れている。機動戦士ガンダムシリーズに登場するザクの頭部を再現したものだが、最大の特徴はサイズ。カプセルよりも大きいこのアイテムはどのように開発したのか。担当者に聞いた。
CDも苦戦しているのに、なぜ中目黒のカセットテープ店は好調なのか
中目黒駅から徒歩10分ほどのところに、カセットテープ店があることをご存じだろうか。店名は「waltz」。CDの売り上げも減少しているのに、なぜカセットテープを扱っているのか。店主の角田太郎さんに聞いたところ……。
再生ボタンを押したのは誰か? 昭和のカセット「マクセル」が登場した理由
昭和100年の2025年、カセットテープ「UD-60A」が限定発売され即完売。ストリーミング全盛の時代に、あえて“スキマ”市場に挑んだ電響社の狙いとは──。

