犬山観光、V字回復の裏で何が? 食べ歩きブームとゴミ問題、外国人への偏見……「急いだら絶対にいかん」と仕掛け人:地域経済の底力(3/4 ページ)
19万人まで落ち込んだ来場者を3倍以上に押し上げた愛知県犬山市。復活の鍵は、住民自らがルールを決める「串グルメ」の誕生だった。成功の裏で噴出するゴミ問題や住民摩擦に、仕掛け人はどう向き合ったのか。地方創生の光と影、20年の執念に迫る。
城下町にも住民は暮らしているという現実
こうしたにぎわいの裏側で、課題も静かに積み重なっている。
城下町は観光客であふれる一方、メイン通りに面した住宅には生活者がいる。週末には朝から晩まで家の前に行列ができる。周辺道路は車で渋滞し、緊急車両の通行にも支障が出かねない。後藤氏によると、一般住民の理解を得るのはほぼ困難で、せめて黙認してもらえることが最大のゴールだという。
城下町の商店においては別の課題もある。例えば、ゴミ問題一つとっても簡単ではなかった。食べ歩き文化を推進しながらもゴミ箱がないという矛盾を解消するために、各店舗が相互に食べ終わった串を回収する仕組みを作ろうとした。しかし、「自分の店は10本しか売っていないのに20本分を回収している」という感情的なすれ違いが生まれてしまったのだ。共有の串入れを設置する形に落ち着いたのは、コロナ禍が明けた後のことだ。
海外観光客が増えると、また別の摩擦が生まれる。後藤氏が気にするのは、地元の人々が偏見を持ってしまうことだ。「例えば、『外国人はマナーが悪い』といったレッテルを貼ってしまわないよう、全員がそうではないという話を、地元向けの説明会などでするようにしています」と強調する。
さらに今後、犬山の観光が発展していく上で避けられないのが、エリア全体をどうマネジメントするかという問題である。城、川、城下町と、それぞれにリーダーが存在する。しかし、エリア全体の方針を誰が決めるかは明確ではない。
週末の犬山城は天守に入場するための行列が常態化している。これによって城下町での滞在時間が削られる可能性も大いにある。エリア全体での体験設計を誰かが担う必要があるが、「なかなか自分から言い出す人はいない」と後藤氏は指摘する。
物理的な制約も大きい。道路を急に広げることも、駐車場を増やすことも難しい。来訪者がさらに増加した場合、現状のインフラでどこまで対応できるのか、最適解はつかめていない。
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