採用DXの裏で失われる“企業の誠実さ” 学生が抱く違和感の正体(1/3 ページ)
学生が企業の選考プロセスに参加するかどうかは、そこに「誠実さ」が感じられるかどうかに左右される傾向があるという。AI面接など、採用現場でのDXが進む中、学生は企業の“不誠実さ”を見抜いている。効率化と誠実さを両立させるために、企業にできることとは?
「AIに面接させるなんて、企業の誠実さが感じられない」――。こんな理由で面接への参加や内定を辞退する学生が、今後は増えていくのかもしれない。
リクルートマネジメントソリューションズが発表した「採用CX(候補者体験)に関する意識調査(2025)」によると、学生が企業の選考プロセスに参加するかどうかは、そこに「誠実さ」が感じられるかどうかに左右される傾向があることが分かった。また、AI面接について「人による面接よりも誠実さが感じにくい」と回答した学生が6割近くに上った。
人手不足が深刻化する中、企業にとって採用業務の効率化を図るDXは不可欠だ。しかし、それが学生にネガティブな印象を与えるリスクもある。このジレンマにどう向き合い、どのような採用活動をすべきだろうか。
ES選考や面接が効率化 一方で「AIに落とされたくない」学生の本音
先の調査によると、AIから質問を受けて会話する、会話は人と行うが録画をAIが分析するといった、いわゆる「AI面接」の経験がある学生はまだ3割に満たない。
しかし「SHaiN」や「AI面接官」といったAI面接システムのWebサイトには、有名な大手も含む数々の社名が導入企業として紹介されている。IT人材の採用・転職支援を行うレバテックの調査では、36.3%の企業が採用活動に生成AIを導入することに前向きで、20.6%が導入済みと回答するなど、これから活用が広がっていくと予想される。
AIに期待されているのは、エントリーシート(ES)の評価や面接など、これまで膨大な人手がかかっていた領域の効率化だ。
例えばESの評価に関しては、ソフトバンクが2017年から、サッポロビールは2018年からAIを活用し、それぞれ75%、40%の作業時間の削減ができたとする(※1)。
※1ソフトバンクが新卒の「ES選考」をAIに任せた理由
※1サッポロビール、新卒採用にAI導入 エントリーシート選考時間40%削減
また、ソフトバンクは2025年からグループディスカッションや集団面接を動画面接に変更し、提出された動画の合否判定を行うAIシステムを導入。動画を人間が見て判定するのに比べ、約70%の時間削減が見込まれると発表している。
一方で、評価にAIを使われることに抵抗感をもつ学生は少なくない。リクルートマネジメントソリューションズの調査では、AI面接は人による面接よりも「妥当感」「実力発揮感」「納得感」「誠実さ」が「感じにくい」と回答した割合がいずれも50%を超えた。
人による面接の方が良い理由としては「社員に直接会うことで、その企業や社員の雰囲気を知りたい」(61.3%)、「人の面接のほうが、自分のことをうまく伝えられそう」(60.8%)、「人のほうが、自分をきちんと掘り下げて評価してくれそう」(39.9%)などがあり、人間同士だからこそくみ取れるものがあり、AIには気持ちが伝わらない、と感じていることがうかがえる。
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