シリコンバレーはなぜ「ものづくり」を失ったのか 株主資本主義が壊したイノベーションの循環(3/3 ページ)
現代のシリコンバレーは、かつて「ものづくり」分野で世界最先端のイノベーションを起こしていた当時の姿からは程遠い。なぜ、このような状態になったのか?
NEC、東芝、Panasonicの危機
かつてのアップルは全ての製品をシリコンバレーでつくっていた。しかし、今は100%国外生産だ。MacBookもiPhoneもアジアでつくられている。
これではイノベーションが生まれにくくなって当然だ。「設計」と「製造プロセス」のギャップが生まれ、それを解決しようとする過程でイノベーションは生まれるのだから。
アップルの革新性が乏しくなったのは、スティーブ・ジョブズが亡くなったからだけではない。自分たちで発想し、手を動かしてつくり、問題点に気付き、また改良する――という工程が分離されたからだ。研究開発と製造部門が近くにあってこそ生まれるものがある。
日本のNECも東芝も、Panasonicも同じだ。これらの企業が、株主資本主義的な経営に追い込まれることによって、「資本効率」の観点から、製造部門を切りはがすことが数字の上では適切なように思えた。また、製造部門を外に出すことを、株主やメディアからも賞賛された。
一方で、韓国のサムスンのように、現在も研究開発から製造部門まで、全て一貫して保有している企業もある。サムスンでは理想的なフィードバックループがあり、イノベーションが起こっている。日本の製造業がいま、世界に大きく遅れを取っている最大の原因のひとつはここにある。
企業は既存の商品の改良だけをやっていても尻すぼみになる。次々と新しい製品をつくっていくには、中長期的な視点での投資が必要だ。
短期的に利益が出なくても、「リスクを取ってチャレンジする」――そんなベンチャー精神を鼓舞する仕組みがなければイノベーションは生まれない。
力のある人、お金のある人、声の大きな人が人々から奪い、さらに強くなっていくのを見ながらどこかおかしい……と思っている人に「誠実な仕事とは何か?」を問い直す。
悩んだとき、葛藤したとき、苦しいときに、自分を「誠実な世界」にとどめるための“11の自問”
世界中の財界人から尊敬を集めるシリコンバレー最高峰の日本人事業家である著者が、死ぬときに後悔しない「最高の仕事を生きる」ために魂を込めた1冊です。
著者プロフィール:原丈人(はら・じょうじ)
1952年大阪府生まれ。慶應義塾大学法学部在学中から中米考古学を研究。27歳でスタンフォード大学経営大学院MBA課程に入学。その後、工学部大学院に転籍。在学中にシリコンバレーで光ファイバーディスプレイ開発メーカーを創業。1984年デフタ・パートナーズを創業し、ソフトウエア、情報通信、半導体技術、バイオ、創薬等のベンチャー企業やベンチャーキャピタルに出資、経営を行う。国内でも大阪にデータコントロール社を創業し、社長に就任。1990年代には自身がパートナーを務めるアクセル・パートナーズが全米第2位のベンチャーキャピタルとなり、シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストとなる。
1985年にスタンフォードで設立したアライアンス・フォーラム財団は現在、国連経済社会理事会の特別協議資格を有する米合衆国非政府機関となり「世界中に健康で教育を受けた豊かな中間層を生むこと」を目的とした活動を40年間にわたり続けている。並行して各国の大統領顧問や国際機関大使等を歴任。日本では、財務省参与(2005〜2009年)、内閣府本府参与(2013〜2020年)、経済財政諮問会議専門調査会会長代理、法務省危機管理会社法制会議議長などを務める。大阪大学、大阪市立大学、香港中文大学、香港理工大学等の医学部や工学部で教授職を歴任した。著書に『新しい資本主義』『増補 21世紀の国富論』『「公益」資本主義』などがある。
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