シリコンバレーはなぜ「ものづくり」を失ったのか 株主資本主義が壊したイノベーションの循環(2/3 ページ)
現代のシリコンバレーは、かつて「ものづくり」分野で世界最先端のイノベーションを起こしていた当時の姿からは程遠い。なぜ、このような状態になったのか?
イノベーションの誤解
ここで「イノベーション」という言葉に対する誤解を解いておきたい。イノベーションとは、革新的な技術や発想によって新たな価値を生み出し、社会に大きな変化をもたらすことだ。
ここで誤解が生まれる。イノベーションと言うと「革新的なアイデアを持ったたった一人の天才が生み出したもの」のようにイメージしてしまうのだ。
オーストリア生まれの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、1912年に出版した著書『経済発展の理論』で、「新結合(neue Kombination)」という言葉を用いてイノベーションの概念を提唱した。
イノベーションの父と呼ばれるシュンペーターは、イノベーションを「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なるやり方で新結合すること」と定義している。
つまり、イノベーションは先端研究の後、それを「製品にしていく過程」で生じるものなのだ。決してアイデアそのものがイノベーションなのではない。
ある研究によってひとつの革新的な製品が「設計」されたとしよう。それを製造段階に移したとき、必ず設計通りにいかない部分、研究時の机上の理論とは食い違う箇所が出てくる。
この壁を乗り越える「試行錯誤」の中で生み出されるものこそが、イノベーションだ。これこそが、冒頭で紹介した「フィードバックループ」である。
ボーイングの例を思い出していただきたい。海外旅行の常識を打ち破るほどの革命的な飛行機を生み出したボーイングは当時、設計から製造までをシアトルで一貫して行っていた。
マクドネル・ダグラスとの合併後に株主資本主義化し、シカゴに本社機能を移転。これによって経営と製造部門を引き離し、本社は「現場の声」に耳を傾けなくなった。
これと同じようなことがシリコンバレーの多くの企業で起きたのだ。
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