観光業はなぜ稼げない? 低賃金・低生産性の構造を探る:観光ビジネス(1/3 ページ)
大半の観光地は低賃金・低生産性に苦しむ。売上総利益の低さや労働集約型の構造、季節変動が重なり、従業員の賃金は上がりにくい状況が続いている現実を解説する。
この記事は、書籍『観光ビジネス』(内藤英賢/クロスメディア・パブリッシング)に、編集を加えて転載したものです。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
鎌倉、箱根、ニセコといった東京以外の地域が世田谷区の時給を抜いたことが話題になりました。そうはいっても一部の特殊な事例で、大半の観光地が低賃金に苦しんでいるというのが観光業の実態です。
厚生労働省が出している産業別賃金を見ても、宿泊業・飲食サービス業は最低水準に近く、低賃金に喘いでいることが見て取れます。
なぜ、観光業は低賃金なのでしょうか? それは残念ながら低生産だからという理由となってしまいます。
低生産つまり労働生産性が低いということですが、労働生産性=売上総利益(粗利)÷労働投入量という式に表されるように、日本の観光業は売上総利益(粗利)が低すぎるのか、投下している労働量が多すぎるのか、ということになります。結論としては、どちらも悪いというのが現状です。
(1)低い売上総利益(粗利)
まず大前提として、分子である売上総利益(粗利)がそもそも低いという点が挙げられます。
特に地方部で多い旅館を例にとりますが、全国の旅館の稼働率が40%程度しかないということです。これは端的に言えば、金・土・日+お盆・GW・年末年始くらいが稼働していて、平日の月〜木はガラガラということです。
自虐的に「今日は、お客さまよりスタッフの人数の方が多いわ」と嘆く方もいます。これではスタッフの人件費をまかなうだけの売上総利益(粗利)が稼げていないのは火を見るより明らかです。
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