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なぜ「ヤマザキ春のパン祭り」は続くのか 5億枚超の「白い皿」を生んだ、日常に入り込む体験設計グッドパッチとUXの話をしようか(3/4 ページ)

45年続く、ヤマザキ春のパン祭り。景品としてもらえる「白い皿」の交換枚数は2025年時点で5億9000万枚を超えた。なぜ、こんなにも長く続くのか?

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使われ続ける「白い皿」という日用品

 あの白い皿は、豪華なブランド品ではありません。見た目はとてもシンプルで、言ってしまえば「どこにでもありそうな白い皿」です。

 しかし、この「どこにでもありそう」という点が、むしろ重要なのかもしれません。

 例えば、派手なデザインの皿や記念品のようなアイテムだった場合、手に入れた瞬間がピークになってしまうことがあります。飾っておくものになり、日常ではあまり使われなくなる……なんてことも十分にあり得ます。

 一方、春のパン祭りの皿はとても実用的です。電子レンジ対応で、丈夫で、食卓にも馴染む。普段の生活の中で自然に使える道具になっています。


春のパン祭りの皿の歴史(画像:ヤマザキ製パン公式Webサイトより)

 つまり、この皿は「もらうこと」よりも「使い続けること」に意味があります。毎日の食卓で使う中で、ふとしたときに「そういえばパン祭りでもらった皿だったな」と思い出す。その記憶が生活の中に静かに残っていく。景品が日用品であることで、キャンペーンの体験も生活の中に残り続けます。

 UXデザインの世界では、人の行動は「モチベーション」「障壁」「トリガー」の組み合わせで生まれると言われます。皿のような日用品は、この「トリガー」が日常の中に存在し続ける状態をつくります。

 企業のノベルティとしてカレンダーがよく配られるのも、同じ発想と言えます。毎日目に入る場所にあることで、ブランドとの接点を継続的に生む効果があります。

 ちなみに、この白い皿は毎年少しずつデザインが変わっています。白くてシンプルな皿ですが、実はフランスのアルク社が製造しており、毎年新しいモデルが用意されています。

 その理由は、景品の白い皿が使われ続けることの難しさにあります。戸棚を開ければ「気が付けば使わなくなった皿」が1枚や2枚ある家庭も多いでしょう。いわば「二軍落ち」してしまう食器です。

 日常で使われ続ける皿をつくるのは簡単ではありません。サイズや形、重さ、扱いやすさ。食卓に違和感なく馴染むことが求められます。

 「特別じゃない」からこその難しさ――。春のパン祭りの白い皿は、そうした条件を満たしながら、長く食卓に残ってきたのかもしれません。

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