年間470万個を売った「峠の釜めし」 売上95%減の危機をどう乗り越えたのか(5/5 ページ)
創業140年の老舗・荻野屋が開発した「峠の釜めし」はピーク時には年間470万個も売れた。しかし、観光需要が大きかったがゆえに時には売り上げが95%減となった月も存在した。どのように危機を乗り越えてきたのか、取材した。
商品そのものではなく「思い」に回帰する 140年目の問い直し
今、高見澤氏の念頭にあるのは「原点回帰」という言葉だ。都内展開やIPコラボなどさまざまな試みを重ねてきた結果として、「自分たちの核となるものをもっと強くしなければいけない」という思いが強まっている。
荻野屋の原点は、群馬・横川だ。創業当時は信越本線の要所として栄えた町だったが、廃線後は人口も減り、往時の面影は薄い。それでも「鉄道遺産の町」として知られ、SLの運行などを目的に観光客が訪れている。
「私たちが横川という場所に対して、まだ全力を投入できていないのではないか。やるべきことは、実はそこにあるのではないかと、ここ1年ほど強く感じています」
1958年、「旅の途中で温かいものを食べてほしい」という思いから、「峠の釜めし」は生まれた。益子焼の器を使った弁当という形は、その思いを具現化したものだった。現在の峠の釜めしの販売個数は非公開だが、それでも売り上げは荻野屋の事業全体の約4割を占める。
「『峠の釜めし』はなぜ生まれたのか。その問いに立ち返ることが、今の荻野屋には必要だと思っています。商品そのものを守るのではなく、なぜそれが生まれたかという思いと姿勢を守ることが荻野屋らしさであり、これからの判断の軸になると考えています。それを社員にも理解してもらい、一緒に会社を続けていきたい。形を守ることと、思いを守ることは違いますから」
試したことが全て成功したわけではない。止めるべきタイミングを逃したこともあれば、続けていれば芽が出たかもしれないと悔やむ施策もある。それでも「小さく試して、小さく失敗する。その繰り返しがこの140年だったと思います」と高見澤氏は力を込めた。
荻野屋は今、再構築の途中にある。何をやめ、何を続け、何に賭けるのか。駅弁を取り巻く環境が変化する中で、老舗はその原点をあらためて問い直している。
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