スーパーは「安さ」ではもう選ばれない 実質賃金マイナス時代、小売りはどう戦うべき?:小売・流通アナリストの視点(1/5 ページ)
実質賃金のマイナスが続いている影響で、これまではディスカウントストアに顧客が流れていたが、その流れも落ち着いた。今顧客が求めているのは、「安さ」ではなくなっている……。
筆者プロフィール:中井彰人(なかい あきひと)
みずほ銀行産業調査部・流通アナリスト12年間の後、独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。執筆、講演活動:ITmediaビジネスオンラインほか、月刊連載6本以上、TV等マスコミ出演多数。
主な著書:「小売ビジネス」(2025年 クロスメディア・パブリッシング社)、「図解即戦力 小売業界」(2021年 技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。
実質賃金はこれまでマイナスが続いていたが、2026年1月に久々にプラスになった(図表1)。ただ、米国とイスラエルのイラン攻撃による中東情勢の影響で、原油価格は急騰している。今後さまざまな物価に影響することを考えれば、物価上昇幅が再度拡大することは確実だろう。しばらくは、実質賃金マイナスの環境が続くことになりそうだ。
そもそも1月がプラスになったとはいえ、あくまで平均値の話にすぎない。大幅な賃上げが実施されている大企業勤務者などがけん引し、平均が上がっているというのが実態だろう。「K字化する消費」と言われるように、賃上げの恩恵を受けている層とそうでない中小・零細企業勤務者との間で消費志向が二極化していることを認識しておく必要がある。
直接的な統計データがないためつかみにくいが、消費者の懐具合は所得の低い層ほど厳しくなっているという兆候はいくつも見られる。
例えば、所得階層別にエンゲル係数(家計消費における食料品支出の割合)の動きを見てみると、所得が少ない層ほど、その上昇幅は大きい(図表2)。日々の食費に関しても、これまで以上に、節約を余儀なくされる層が増えている。
「食べない」という選択肢はないため、より安い店で購入したり、廉価な商品へ切り替えたりすることになる。それに加えて、外食費などの選択的支出(先送り可能な出費)の回数を減らしたり、安い店に変えたりすることになるだろう。
こうした二極化を見ると、所得の少ない層にとって、生活必需品はいかに安く買うかが重要であり、ディスカウントストアのチェーンの売り上げが伸びることが想定される。
本稿では、各小売りチェーンの売り上げ動向を見ながら、ディスカウントストアのチェーンが伸びているのか、実質賃金マイナス時代に選ばれる小売りはどこなのかを探ってみたい。
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