静岡の町工場が「きつい・汚い・危険」から脱却 応募者3.5倍の“誇れる現場”になるまで(1/3 ページ)
「工場=3K(きつい・汚い・危険)」というイメージは、今もなお根強い。コプレックは社員1人当たり約18万円の教育投資などを通じて工場で働く人が誇れる環境作りに挑み、求人応募者数を2年で3.5倍に伸ばした。「誇り」を軸にした人的投資は、どのように成果につながったのか。その戦略に迫る。
「工場=3K(きつい・汚い・危険)」というイメージは、今もなお根強い。これまで製造業の現場では、コストカットばかりが重視され、働く環境の整備が後回しになっていた。
「従業員が人生の大半を過ごす工場がこれほどまでに暗く、3Kのイメージを持たれていていいのだろうか」──こう語るのは、静岡県掛川市の町工場、コプレックの小林永典社長だ。同社は、工場に対する固定観念を覆そうとさまざまな改革を進めてきた。
「工場を、誇ろう。」をビジョンに掲げ、さまざまな設備投資に加えて、教育の場もセットで提供している。社員1人当たりの年間教育費として約18万円を投入しており、この金額は全国平均の5倍に相当する。
プロジェクト開始から2年で、求人への応募者は3.5倍に増加した。
「働く人の誇りを醸成する」という同社の挑戦は、人手不足に苦しむ製造業にとって“救いの一手”になるかもしれない。
「工場が暗くていいのか」 3代目社長が抱えていた違和感
コプレックは小林社長の祖父が創業した会社で、小林社長は現在3代目にあたる。幼い頃から工場に対して「暗い」という印象を持っていた。日本は「ものづくりの国」と称される一方で、その現場環境は決して恵まれているとは言えない。こうしたギャップに、小林社長は強い違和感を抱いてきた。
「日本の経済は長きにわたり製造業に支えられてきたにもかかわらず、従業員が人生の大半を過ごす工場がこれほどまでに暗く、3Kのイメージを持たれていていいのだろうか。コストダウンは美徳とされているが、本当にそうなのか」
こうした問題意識から、同社は従来の「コスト最優先」の発想を見直し、従業員が誇りを持てる環境づくりへと舵を切った。
工場では、視覚的な整然さを生み出すために「色による整理整頓」を導入。人、道具、場所、空間を色で区分することで、直感的に理解できる環境を整えた。
さらに、先進設備の導入に加え、内装にこだわった食堂やトレーニングジムの設置など、従来の工場のイメージを覆す空間づくりにも取り組んでいる。
こうした環境の整備に加えて、教育への投資も強化。2025年の1人当たり教育費は約18万円に上る。労務行政研究所の調査によると、2024年度の従業員1人当たりの教育研修費用は全国平均で3万4606円となっており、大きく上回る水準と言える。
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