老舗文具店から「DX支援業」へ 冷ややかっただった社内の反応、どう変えていった?(2/3 ページ)
地元の文具店から「DX支援業」に転身した企業がある。畑違いの領域だったため、社内の反応は当初冷ややかなものだった。どのように変えていったのか? 三代目社長に話を聞いた。
店舗での文房具販売事業から撤退し、跡地をショールームに
きっかけは、宮城県警察本部が実施したサイバーセキュリティ啓蒙活動のプロポーザルをTAKAYAMAが受注したことだった。プロポーザルとはコンペとは異なり、価格だけでなく企画提案や技術力、体制などを総合的に評価して事業者を選ぶ方式だ。
「勝因は『伝え方』でした。サイバーセキュリティの啓蒙活動を担うので、ITに詳しくない中小企業の経営者に、サイバーセキュリティを自分事として分かりやすく届けることが重要だと考えました。プレゼンではその伝達力を強調しました」
この受注は、社外からTAKAYAMAに対する信頼感へとつながっていった。実績が見えるようになったことで、社内の雰囲気も徐々に変わり、社員も「自分たちもサイバーセキュリティを学ぶ必要がある」と受け止めるようになった。
社内の変化と並行して、DXにも着手した。2020年のコロナ禍では、社内コミュニケーションとマーケティング活動を全てデジタルに切り替えた。社内のリモートワーク体制の整備だけでなく、社外に対してテレワーク導入支援サービスも開始。サイバーセキュリティ対策のオンラインセミナーも展開した。
「オンライン採用、リモートワークなど、私たちはコロナ禍でさまざまな取り組みを行いました。私たちは『自分たちの会社を、中小企業がDXを実践する場』と捉えることにしたのです。地方の文具店がここまでデジタルを使いこなしているという事実が、強力なメッセージになりました。採用にも良い影響があり、大企業で疲弊していた優秀な若手が『塩釜で面白いことをやっている会社がある』と集まってくれました」
このときに採用した社員たちが、その後のTAKAYAMAを力強く支えてくれた。そして、2022年、高山氏が三代目の社長に就任し、店舗での文房具販売事業からの撤退を決断。
サイバーセキュリティ事業に加えて、クラウドなどのデジタル支援サービスを開発し、「DXカンパニー」として生まれ変わることを決めたのだ。
「店舗の売り上げは全体の5%以下に落ち込んでいました。そこで店舗事業は撤退し、100坪ほどの跡地を私たちのDX実践を顧客に見せる『ライブオフィス』にリノベーションしました。昔ながらの文具店を最先端のワークスタイルを提案するショールームにしたのです」
ライブオフィスを開設した効果は社内外に及んだ。顧客が来社する機会が増え、社外の人によりTAKAYAMAの取り組みを体感してもらえるようになった。文具ではなく「DXカンパニーのTAKAYAMA」という認識が高まり、受注率向上やファン化にもつながったという。社内においては、コミュニケーションの活性化、社員エンゲージメントの向上、採用力の強化といった効果が見られた。
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