「初任給40万円」より「誠実さ」が欲しい 効率化に走る採用現場が見落とす、若者の本音:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/2 ページ)
若者争奪戦が激化する中、「誠実な企業に入りたい」学生が急増しています。学生が切望する「誠実さ」の正体を考察してみましょう。
「誠実な企業に入りたい」── 若者争奪戦が激化する中、そう漏らす学生が急増しています。
こうした傾向は、リクルートマネジメントソリューションズが実施した「採用CX(候補者体験)に関する意識調査(2025)」からも読み取れます(以下、抜粋し要約)。
- 学生が企業の選考プロセスに参加するかどうかに最も影響を与えるのは、2年連続で「企業の誠実さ」だった
- 学生からの評価が高い選考プロセスは、2年連続で「個人面接」。そこでの「誠実さ」「実力発揮感」「納得感」が志望度を左右していた
- 面接実施後の辞退理由のトップは、個人面接では「やりたい仕事ができない」、グループ面接・AI面接では「面接方法への納得感のなさ」 だった
- AI面接の経験者は3割弱程度。対人面接に比べ「妥当感」「誠実さ」「実力発揮感」「納得感」を感じにくいとする割合が前年より増加した
- 6割以上の学生が「人による評価」を希望。背景には双方向の情報収集や、機械的な見極めに対する不安がある
いかがでしょうか。企業側は「若者に好まれる企業」になるため、必死かつ誠実にあの手この手で“メニュー”をそろえているのに、なぜ「誠実さ」を求めるのか? 待遇を良くするのは「誠実ではない」と思われているのでしょうか?
企業が選ぶ側から「品定めされる側」へと転じた今、学生が切望する「誠実さ」の正体を考察してみましょう。
学生が企業に突き付けた「誠実さ」の正体
最初に思い浮かぶのは「学歴フィルター」です。
日本経営者団体連盟(2002年に経済団体連合会と統合、現・日本経済団体連合会)は、1990年代後半に「採用選考に関する企業の倫理憲章」を制定。1953年から40年以上続いた就職協定の廃止を宣言するとともに、企業には「いつ、どのような形で採用活動・選考活動を行うか」を公開するよう求めました。それまで脈々と続いていた一流大学の学生の「青田買い」を禁止し、学歴社会との決別を宣言したのです。
ところが、その後も企業はあの手この手で、一流大学の出身者確保を試みました。学歴主義はなくなるどころか、完全に「ブラックボックス化」しました。就職活動は年々画一化され、デジタル化が進み、企業は欲しい大学の学生をフィルタリングできるようになりました。
フィルタリングするのは「人」ではなく「システム」ですから、差別する側にも、される側にも生々しさがありません。完全にブラックボックス化しているので、企業は「知らぬ存ぜぬ」で簡単に否定できます。
学生も学歴で差別されている気がするけれど「差別された自分の学歴」を受け入れたくない気持ちがあるので、「これって学歴フィルターじゃない?」と釈然としない気持ちをSNSで発信する程度です。
「差別は『する側』の問題なのに、なぜ俎上(そじょう)に載せるのはいつも『差別された側』なのか?」という理不尽を、今の学生は感じてきた。それに追い打ちをかけたのが、同じような黒いスーツであちこちを駆け回る企業訪問です。
本当は「自分らしく」ありたい。「本当の自分」を見てほしい。「自分」のことをきちんと評価してほしい──。格差社会で生きていく若者たちの生きづらさが、大人や企業に突き付けたのが「誠実さ」ではないのでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
慕われる“雑談おじさん”を切り捨てた企業の末路 ギスギス職場を救う「見えない貢献」の正体
かつて日本の職場には、仕事をしているのかいないのか分からないけれど、なぜか周囲に慕われる「潤滑油」のような先輩や上司がいました。今、こうした人々の「目に見えない貢献」が、再び脚光を浴びています。
顔だけ出して即退社……「出社回帰」のウラで広がる「コーヒーバッジング」の代償とは?
米国で最近、「Coffee badging」という働き方が流行っています。出社後、コーヒー1杯で帰ってリモートワークをするというものです。
無駄すぎる日本の「1on1」 上司が部下から引き出すべきは“本音”ではない
上司と部下の1on1ミーティングを実施する企業が増えています。「若手社員のために!」と経営層や人事が意気込むものの、現場からは戸惑いの声も……。なぜ、日本企業では1on1がうまく機能しないのでしょうか。
給与上がらず、責任と仕事だけが増加 「静かな昇進」をさせる“危険な職場”の大問題
「給料は変わらないのに、仕事だけが増え続けている」「役職は変わらないのに、後輩の育成がタスクに加えられた」といったような相談がこの数年で増えています。年齢は30代がほとんどです。ひょっとすると、あなたも似たような状況に陥っていませんか?
