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「物探しに2時間」が日常の塗装工場が、なぜDXベンダーに? 元SEの社長が示した中小企業の勝ち筋(1/2 ページ)

工業塗装会社であるヒバラコーポレーションは、現場の課題解決から出発し、自社開発のシステムを外販するDXベンダーへと進化した。同社は、祖業とDXを両立しながら新たな収益源をどのように築いたのか。そのプロセスをひもとく。

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 茨城県東海村に本社と工場を構えるヒバラコーポレーションは、1975年設立の工業塗装会社だ。電機メーカーなどの部品塗装を手掛けている。

 従業員数は約50人。地域に根ざした町工場だが、塗装業に加えて自社開発のAI画像認識システムや設備監視ソリューションを提供する、DXベンダーとしての事業も展開する。自社工場で培ったノウハウを外販し、事業として確立している。

 近年、中小企業が祖業に加えてDX支援を事業化するケースは増えているが、同社の取り組みは20年以上前にさかのぼる。

 小田倉久視社長は大学卒業後、大手IT企業に就職し、システムエンジニアとしてキャリアを積んだ。

 「会社を継いだ当時、現場は人手に頼った状態で、塗装業特有の“ある課題”があり、工場では『物探しに1〜2時間費やす』といったことも日常茶飯事でした。また、塗装業界にはライバルとなる同業他社も多く、ヒバラコーポレーションならではの強みを作る必要もありました」(小田倉社長)

 これらの問題を解決するため、小田倉社長が取り組んだのがDXだった。自社の現場課題をテクノロジーで解決することから、塗装業界全体、さらには製造業全体へと対象を広げてきた取り組みの変遷を追う。

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ヒバラコーポレーション代表取締役社長の小田倉久視氏(編集部撮影)

元SEの社長が描いた「塗装×DX」構想

 小田倉社長が家業に戻ったのは1991年。当時、同社は従業員15人規模の小さな塗装会社で、業務は手書きの紙で管理しており、デジタル化とは程遠い状況だった。

 また、塗装業は受注産業であり、ライバル企業も多く存在したが、同業他社との差別化ができていない状態だったという。

 小田倉社長は元システムエンジニアというキャリアを生かして、塗装だけでなく、製造現場の業務をサポートするソフトウェアサービスを併せて提供できれば、ヒバラコーポレーションならではの強みになるのではないかと考えた。

 そこで、社長自身が社会人大学院で企業経営におけるテクノロジー活用を学び、またDXをけん引する従業員も同じ大学院に通わせた。そこから新規事業の構想が始動し、同社のDXの第一歩となった。

 その後、システムエンジニアやITの知見がある数人の人材が入社し、開発体制を整えていった。現在は、開発チームがシステムを作り、それを自社の工場で試してフィードバックし、改良するというサイクルが生まれている。

「物探しに2時間」を解消した生産管理システム

 DX事業を立ち上げた当初、同社が開発したシステムに工場で使用する「生産管理システム」がある。これは、クライアント企業から塗装の注文を受けた部品の仕様や作業内容などを、デジタル上で個別に管理するシステムだ。

 工場には、塗装を請け負った部品が1万点以上あったが、その中から目当ての部品を見つけるために、従業員が1〜2時間工場内を探し回る光景が日常茶飯事だったという。

 なぜ、これほどの時間がかかるのか。そこには塗装業界ならではの課題があった。

 「通常、製造業では部品に札などを付けて管理しますが、塗装工程ではそれが通用しません。数百度の高温で焼き付ける乾燥炉に入れるため、紙の伝票は燃えてしまうのです。そのため、塗装する部品の管理が難しい状態でした」

 そこで、開発した生産管理システムでは塗装する部品の「写真」を登録できるようにした。これによって「今、対応している部品が何か」を見た目で判断できるようになり、部品を探し回る時間が大幅に減った。

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塗装会社向け「生産管理システム」の画面イメージ(出所:ヒバラコーポレーションWebサイト)

 また、生産管理システムは、塗装作業がどの段階まで完了しているかのステータスも表示し、発注側の企業も確認できるようにした。これにより、発注企業からの「いつ完了するのか」といった問い合わせの数も削減できた。

 生産管理システムはアップデートを続け、ヒバラコーポレーション以外の塗装企業でも導入が進んでいるという。

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