ギリギリの管理職を苦しめる「共感呪縛」 罰ゲームを押し付け続ける経営層の罪:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
数年前から「管理職は罰ゲーム」と呼ばれるようになりました。しかし、経営層は疲弊し切っている管理職に新たなプレッシャーを畳み掛けます。流行りの「共感マネジメント」です。
数年前から「管理職は罰ゲーム」と呼ばれるようになりました。
職場では上からも下からも責められ、家庭では妻からも責められる中間管理職は、いつの時代も“会社の変化”のとばっちりを真っ先に受けてきた気の毒な存在でした。しかもその多くが「プレイング・マネジャー」です。チームの管理を担うマネジャーの役割を果たしつつ、現場でプレイヤーとしての成果を求められる。特に課長さんの立場は、もはや限界を超えていると言っても過言ではありません。
「課長になってから、ぐっすり眠れたことは一度もない」
「前例を覆す決断の難しさに直面している。出口が見えない」
「期待していた部下が突然辞めてしまった。自分の何が悪かったのか」
「休日も仕事のことが頭から離れない。どうやって気分転換をしたらいいのか」
などなど、会社では言えない“本音”を山ほど聞きました。「課長って、日本で一番大変な仕事では?」と感じるほどです。
そんな「上の苦労」を目の当たりにすれば、下の世代に管理職アレルギーが広がるのは必然でしょう。
第一生命経済研究所が非管理職の一般社員に実施した昇進に関する調査では、48%が「昇進を希望しない」と回答。エフアンドエムネット(大阪府吹田市)が実施した調査では、63.3%が「管理職になりたくない」とし、56.7%が「自社の管理職が『罰ゲーム化している』と感じる」と回答しています。
管理職を追い詰める「共感呪縛」
しかしながら、階層組織は下から見上ると見える景色が、上から見下ろすと全く見えない。その結果、疲弊し切っている管理職に「部下とのコミュニケーションには細心の注意を払え」「厳しいことは絶対に言うな」「感情に寄り添え」「優しく共感的に接しろ」etc,etc──。新たなプレッシャーを畳み掛けます。流行りの「共感マネジメント」です。
Z世代の台頭とともに「思いやり」「信頼」「つながり」「親切心」といった共感力なるものが、上司に求められるようになりました。海外、特に米国では、共感的な行動が、離職率の低下、生産性の向上、企業文化の強化につながるとする調査研究が多数存在するので、すぐやめる新人、転職に色めき立つ30代社員を、つなぎ止める策として、共感呪縛なるものが管理職をさらなる苦境に追い詰めているのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
慕われる“雑談おじさん”を切り捨てた企業の末路 ギスギス職場を救う「見えない貢献」の正体
かつて日本の職場には、仕事をしているのかいないのか分からないけれど、なぜか周囲に慕われる「潤滑油」のような先輩や上司がいました。今、こうした人々の「目に見えない貢献」が、再び脚光を浴びています。
顔だけ出して即退社……「出社回帰」のウラで広がる「コーヒーバッジング」の代償とは?
米国で最近、「Coffee badging」という働き方が流行っています。出社後、コーヒー1杯で帰ってリモートワークをするというものです。
無駄すぎる日本の「1on1」 上司が部下から引き出すべきは“本音”ではない
上司と部下の1on1ミーティングを実施する企業が増えています。「若手社員のために!」と経営層や人事が意気込むものの、現場からは戸惑いの声も……。なぜ、日本企業では1on1がうまく機能しないのでしょうか。
給与上がらず、責任と仕事だけが増加 「静かな昇進」をさせる“危険な職場”の大問題
「給料は変わらないのに、仕事だけが増え続けている」「役職は変わらないのに、後輩の育成がタスクに加えられた」といったような相談がこの数年で増えています。年齢は30代がほとんどです。ひょっとすると、あなたも似たような状況に陥っていませんか?
