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ゲーム会社ではなく、もはや投資ファンド? コーエーテクモ決算から読み解く「資本配分」の在り方古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

コーエーテクモが「ゲーム会社を装った投資ファンド」だと揶揄(やゆ)されている。

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 コーエーテクモホールディングスは4月20日、2026年3月期通期の連結業績予想の上方修正を発表した。

 連結営業利益を従前予想の310億円から360億円に引き上げるが、目を見張るべきは資産運用の損益が反映される「経常利益」の上方修正だ。営業利益が本業の稼ぐ力を示すのに対し、経常利益は金融収益なども含めた総合的な収益力を表す。

 同社は2025年10月にも中間期予想を上方修正し、資産運用の好調を理由に経常利益・純利益が計画比2倍に膨らんでいた(※)。今回は370億円の経常利益見込みを555億円まで積み増した。

※参照:コーエーテクモ、“資産運用”好調で業績を上方修正 経常利益&純利益が2倍に

 一方、売上高は45億円の下方修正に転じた。金融収益がゲーム会社の業績を押し上げるこの構造は、果たして健全なのか。

 これはゲーム業界に限らず、手元資金をどこに振り向けるかという、多くの企業に共通する経営課題でもある。

 今回の記事では、企業が本業で生んだ余剰キャッシュを金融市場に投資することの是非について考察する。同社の決算を読み解くと、現代の経営者に求められる「資本配分」(キャピタル・アロケーション)の現実が見えてくる。

ゲーム会社を“装った”投資ファンド?

 コーエーテクモHDのIR資料によれば、2026年3月期は第3四半期累計で営業利益145億円(前年同期比3.3%減)に対し、投資有価証券売却益109億円、デリバティブ評価益55億円が積み上がり、経常利益では310億円を確保していた(※)。

※デリバティブ:金融派生商品

決算
コーエーテクモホールディングス「業績予想の修正に関するお知らせ」より

 この決算に対し「ゲーム専業メーカーの損益計算書としてゆがんでいる」と批判する声もある。本業で取るべきリスクを取らず、取るべきでない部分でリスクを取っているという趣旨だ。

 具体的には、デリバティブや有価証券売却益は市場変動次第で評価損にも振れる性質があり、利益の質が不安定な点を指摘する声がある。

 また、高い利益率が期待できる本業の事業利益に投資をせず、一般的な期待収益率が年間数%と低い金融市場に投資することは、株主資本利益率(ROE)を押し下げるものであることも指摘されている。

 「ゲーム会社を装った投資ファンド」という揶揄(やゆ)は、この違和感の的確な言語化であるとも考えられる。

“投資の神様”と呼ばれるバフェット氏も「余剰キャッシュを外部投資」

 ここで視点を変えてみよう。

 「投資の神様」という異名を持つウォーレン・バフェット氏が率いた米バークシャー・ハサウェイは保険業を営んでいるが、投資ファンドとして認識されていることが多い。

 バークシャー・ハサウェイの2025年年次報告書によれば、同社の株式ポートフォリオ時価は約2978億ドル。米Apple、米American Express、米Coca-Cola、米Bank of America、米Chevronの上位5社で、全体の約7割に達していた。

 バフェット氏は株主宛書簡で、CEOの最重要任務を「キャピタル・アロケーション」(資本配分)と繰り返し強調してきた。

 本業が生む余剰キャッシュを、限界収益率が低下する自社事業に再投資し続けるのではなく、より高いリターンが見込める外部投資へ機動的に振り向ける。この自由度の高い設計こそ、企業価値を決めるという思想だ。

 コーエーテクモの襟川恵子取締役名誉会長は過去に、銘柄の選定基準について「自分が入社したい、経営してみたい会社かどうか」だと語っていたことがある。襟川名誉会長は新聞・経済雑誌を自ら読み込み、米国ではGAFAを長期保有、AI・クラウド・セキュリティなど先端分野に重心を置くスタイルでも知られるが、これはバフェット氏が説いてきた投資哲学と非常に近い。

 両氏が経営者として持つ投資に対するスタンスは、自分が理解できる事業で、優れた経営陣を持ち、長期で保有するといった諸条件で一致する。

決算
コーエーテクモが「ゲーム会社を装った投資ファンド」だと揶揄(やゆ)されている。これはゲーム業界に限らず、手元資金をどこに振り向けるかという、多くの企業に共通する経営課題だ(写真はイメージ、ゲッティイメージズ)

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