「服のサブスク」はなぜ儲からないのか エアークローゼットが10年で黒字化できた背景:サブスクの勝算と限界(5/5 ページ)
撤退が相次ぐ「服のサブスク」市場で、エアークローゼットが創業10年で初の黒字化を達成した。物流コスト削減や継続率94%超を支える改善の積み重ね、その裏側を追った。
黒字化は「第2のスタートライン」
しかし、利益を出し続けるには別の難しさがある。2026年6月期の業績予想は、売上高57億1600万円(前期比15.3%増)と成長を見込む一方、営業利益は8100万円(同20.9%減)の減益を見込む。倉庫移転費用に加え、広告宣伝費や人件費の上昇が重なる。
広告を打てば新規会員は増えるものの、1人当たりの獲得コストは年々上昇しており、広告に依存した集客モデルからの転換が課題となっている。エアークローゼットは次の一手として、5月28日から男性向け「airCloset Men's」を開始する予定だ。女性向けで培った物流基盤を活用し、追加投資を抑えながら展開していく。
加えて、自社の循環型物流基盤を他社にも開放する取り組みも始めた。ファッションサブスクでは、返却→検品→クリーニングという循環型の物流を自前で構築する必要があり、参入障壁が高い。天沼氏は「業界が盛り上がるには、3社以上のプレーヤーが必要と言われるが、それが難しい市場」と語る。物流面のハードルを下げることで参入企業を増やし、市場そのものを広げる狙いだ。
コスト構造の改革、継続率を高めるUX設計、パートナーとの協業。エアークローゼットは、そうした体験設計をゼロから積み上げてきた。「サブスクとは、1カ月間何かを可能にする権利を購入していただくもの。商品代金を分割して『サブスク』と呼ぶケースがあるが、それは決済方法の変更であって体験設計の変更ではない」と天沼氏は説明する。
服をレンタルして着る権利、スタイリングしてもらう権利、気に入ればそのまま購入できる権利。複数の体験を組み合わせてこそ成立するという考えだ。サブスクの勝算は「毎月課金されること」にはなく、継続率の高い体験を低コストで回し続けられるかどうかにある。
エアークローゼットにとって黒字化はゴールではなく、同社の言葉を借りれば「第2のスタートライン」にすぎない。成長投資と利益のバランスをどう取るか。次の舵(かじ)取りが問われている。
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