本部99%が転職者、現場3分の1が外国籍 バーガーキング「売上46カ月続伸」を支えるマネジメント(1/2 ページ)
バーガーキングの強さは、社長自身の挫折を組織の「共感」へと変えたマネジメントにある。99%が転職者の本部、3分の1が外国籍人材の現場。多様な組織が46カ月連続増収を遂げたのは、日本語学習支援を「感謝の連鎖」と捉えるような、目先の流出を恐れない長期投資の視点があったからだ。「違い」を排除せず、むしろその「背景」を尊重することが、人手不足時代の生存戦略になる。
マクドナルドが独走する日本のハンバーガーチェーン市場で、急激な成長を見せるのがバーガーキングだ。
国内店舗数は6年間で77店舗から355店舗へと4倍超に拡大。既存店売上高も46カ月にわたって前年同月比を上回り続ける。2025年度の売上高は前年比153%を記録し、2028年末には600店舗体制、売上高1200億円を目指す。
その実績を支える要点は、一筋縄ではいかないプロフェッショナル集団を束ねる「組織論」にある。特筆すべきは、同社の本部組織の「99%が転職者」であり、現場を支える1万人超のスタッフの約3分の1を外国籍の人材が占めるという、極めて多様性の高い構成である点だ。
運営会社であるビーケージャパンホールディングス(東京都千代田区)の野村一裕社長は、自身の転職・挫折経験から、異なる背景を持つ仲間が自律的に動ける組織づくりを強化してきた。46カ月続伸という驚異的な数字を支える、独自のマネジメントに迫る。
野村一裕 ビーケージャパンホールディングス社長。1978年生まれ。上智大学卒業、MBA、一橋大学大学院国際企業戦略専攻。2002年キリンビール入社。料飲店・量販店の営業担当や商品マーケティング担当を歴任。2019年ビーケージャパンホールディングスに入社。同年新体制となったバーガーキングのマーケティングディレクターとしてマーケティング戦略、新商品開発、ブランドコミュニケーションを指揮。2022年にCOO就任。マーケティング部門に加え、店舗開発やフランチャイズビジネス部門を統括。2023年1月より代表取締役社長に就任(撮影:河嶌太郎)
挫折を知るからこそ作れる「強い組織」
――本部組織の99%が転職者とのことですが、野村社長ご自身もキャリアの途中で大きな転機があったそうですね。
実はキリンビールを退職した2017年から、2019年にバーガーキングに入社するまでの2年間に、2社ほど別の会社に在籍していましたが、正直に言うとうまくいきませんでした。キリンでの15年間が自分にとっての「常識」でしたが、一歩外に出るとそれが「非常識」になり、言葉すら通じないような感覚に陥りました。平社員のまま大企業を辞め、その後の2社で挫折を味わい、深く傷ついた経験があります。
だからこそ、バーガーキングに入ってくる社員たちには「転職してくるということは、前の会社で何かしら傷ついたり、満たされなかったりした思いがあったからだよね」とよく話します。それを隠して強がるのではなく、素直に認めることが大事だと伝えています。
ここは99%が転職組です。それぞれが痛みや挫折を知っているからこそ、素直に認め合えば強いチームワークが生まれる。そうした環境づくりを意識しています。
――その「痛み」を共有できる文化を、どう形にしているのですか。
例えば、千代田オフィスのコミュニケーションスペースには、クラフトビールサーバーを導入しました。毎月第3水曜日のハッピーアワーでは、社員同士でビールを飲み、食事をしながら語らう時間を設けています。仕事の話もあれば、たわいもない冗談もある。そんな風通しの良い、素直になれるカルチャーを大切にしています。
「日本語学習」の費用を全額負担 外国籍スタッフを戦力にする方法
――本部だけでなく、店舗スタッフも非常に多様です。約1万人のうち3分の1が外国籍だそうですが、採用・育成のハードルをどう乗り越えていますか。
言語の壁は確かにあります。そこに対して当社は、外国籍のスタッフが語学学校の「ベルリッツ」で日本語を学ぶ費用を、本社が全額負担する仕組みを作りました。シフト外の時間などにレッスンを受けてもらい、その学費を会社が負担する。働きやすい環境を整えることで、戦力として定着してもらっています。
――手厚い教育支援をする一方で、日本語を習得したスタッフがより好条件の職場へ転職してしまうリスクへの懸念もあるのではないでしょうか。
確かに周りからは「日本語をマスターしたら、より好条件の職場へ転職してしまうのでは」と心配されることもあります。しかし、私はそれでいいと思っています。彼らが日本語をマスターして次のステップに進んだとしても、きっと「バーガーキングで日本語を覚えた、あそこで働いてよかった」と自慢してくれるはずです。そして、まだ日本語が不慣れな後輩たちに「あそこなら働きながら学べるよ」と勧めてくれる。そうした「感謝の連鎖」が優秀な人材を連れてくると確信しています。
――日本の接客業では、依然として「流暢な日本語」を求める顧客心理や、言葉の壁によるコミュニケーションの課題もあるかと思います。
正直なところ、日本ではまだ「店員は日本人でないと」という閉鎖的な空気を感じることもあります。しかし、そうした考えの利用者は、他の店舗に行けばいいと割り切っています。
私たち自身が「もっと予算があれば日本人を雇う」などとは微塵も思っていません。今の多様な仲間たちと一緒にここまで成長してきたのですから、彼らと共にもっと大きな舞台で勝負していきたいと考えています。
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