「クレームがない=いい接客」ではない 斎場スタッフが語った深すぎる接客論:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
「答えのない仕事」といわれる接客業の中でも、他業種と比べて次元の異なる奥深さがあるのが、「斎場スタッフの接客」だ。ベテランの斎場スタッフ2人に「接客の真髄」を聞いた。
葬儀の場ならではの意識が働く
この「寄り添い方」には考えさせられた。筆者も先日参列した葬儀で似たような経験があったからだ。葬儀業者側の段取りがあまり良くなかったのだが、誰もクレームを入れることはなかった。喪主や遺族に気を使ったところもあるが、このような場で雰囲気を悪くしてはいけないという意識が働いたのだ。
「そういうものなんですよね。でも、それはそのスタッフにとっては成長、改善のチャンスを逃してしまったことになりますよね。つまり、クレームがないから良かった、クレームがないからいい仕事ができているなんてのは思い上がり以外の何者でもないということです。われわれの世界では『ご遺族の思いに寄り添う』ことがよく言われていますけど、本当の意味でちゃんと寄り添えているのか。これは私の中では永遠に自問自答するテーマです」(山田さん)
ここまでホスピタリティにストイックなのは、山田さんがもともと外食業界で働いた後、東京博善に入社してきたということもあるかもしれない。良い「接客」をして感謝されることは、飲食店でも斎場でも変わらない。それがこの仕事を選んだ理由であり、大きなやりがいになっている、と山田さんは言う。
山田さんとは異なるキャリアを歩みながらも、同じく「遺族に寄り添うこと」を追求しているのが、現在「四ツ木斎場」で後進の育成にあたる松本さん(仮名)だ。
高校卒業後、東京博善に事務職として入社。ほどなくして自ら行事課への異動を申し出て以来、30数年間、火葬と収骨を執り行ってきた。一般の人はもちろん、大物政治家や芸能人、暴力団関係者など、さまざまな人たちを荼毘(だび)に付してきたこの道の「プロ」である。
若手の指導に当たっている松本さんは、火葬の技術、礼儀作法、宗教ごとの知識などを身につけることも重要だが、この仕事で最も大切なのは「心」だと断言する。つまり、(3)マニュアルでは伝えられない「心」を磨け、ということだ。
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