「クレームがない=いい接客」ではない 斎場スタッフが語った深すぎる接客論:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
「答えのない仕事」といわれる接客業の中でも、他業種と比べて次元の異なる奥深さがあるのが、「斎場スタッフの接客」だ。ベテランの斎場スタッフ2人に「接客の真髄」を聞いた。
マニュアルでは伝えられない「心」とは
「私たちの仕事は“心”がなければ成り立ちません。心をこめなくては、ただ火葬をしているだけ、ただ収骨でご説明をするだけになってしまう。どうやって心をこめるのかは、斎場に棺が到着したときから始まっています。そのときのご葬家や会葬者の雰囲気をよく見ておく。悲しみの深さは人によって異なるので、相手の気持ちになって、その様子をしっかり見る。そして、私たちが何をしなくてはいけないのか、してはいけないのかという相手に合わせた対応を自分の中でつくり上げていくことが行事課の仕事だと、私は思っています」
よく接客で大切なのは「観察力」と言われる。客の動きや発言に注意を払い、そこから何を求めているのか読み取って対応するのが接客のプロなら、さらに一歩進んで「悲しみの深さ」を読み取り、「想像力」を働かせていく。それが松本さんが30年以上続けてきた独自のメソッドである。
「自分がされて嫌なことは、相手も同じように嫌だという思いを持つことですね。逆に、自分がされてうれしいことは、相手も喜んでくれるはずだ。そういう想像力が養われると、おのずと、できるだけきれいなご遺骨になるよう丁寧に火葬を行う。遺骨を説明する際の言葉遣いはもちろん、相手の目を見てしっかりと話すといったことが自然にできるようになるんです」(松本さん)
そんな松本さんの「心」は、相手にもしっかり伝わっている。収骨時の丁寧な対応に心を打たれた会葬者から「近いうちに私もここで骨になりますから、そのときあなたにやってもらいたい」というようなことを言われたこともあるという。また、先日は収骨後に喪主から感謝の言葉を伝えられるだけでなく、名前まで尋ねられた。
「こういうふうに感謝をしていただけると、ご葬家や会葬者の皆さんの悲しみに少しでも寄り添うことができたかもしれないと感じます。この仕事をやってきてよかったと思う瞬間ですね」(松本さん)
そんな実体験があるからこそ、「心」の大切さを若手に伝えていくことが必要だという松本さんだが、毎日多くの葬儀が行われる人口約1200万人の都市・東京では、なかなかそれも難しいという。
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