「親の名前」を忘れていた高齢者が語り出した――AI内臓「昭和の青春ラジオ」が介護現場を変えている(1/5 ページ)
生成AIを使ったラジオが、介護現場で導入されようとしている。懐かしい曲や当時のニュースを流すことで、介護施設利用者の記憶を呼び覚ますことができているが、今後浸透する可能性はあるのか?
筆者プロフィール:斎藤健二
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
ダイヤルを1958年に合わせると、木製のラジオから当時のニュースと昭和歌謡が流れ出す。耳を傾けていた介護施設の利用者が、若い頃の思い出を語り始める。
これは介護施設で実証実験中のAIデバイス「RADIO TIME MACHINE(ラジオタイムマシーン)」が見せた光景だ。
開発したのは、博報堂DYグループの「TBWA HAKUHODO」だ。介護大手の「ニチイ学館」が、介護現場での実証実験に協力している。中身は最新の文章生成AIと音声生成AIで、ダイヤルで西暦を選ぶと、その年のニュースとヒット曲がラジオ番組風に再生される。狙いは、利用者の過去の記憶を呼び覚まし、周囲との会話を生み出すことだ。
両社が行った実証実験では、利用者の笑顔の度合いが平均8.7%上昇し、1分当たりの発話量が10.8語増えた。両親の名前すら思い出せなかった利用者が、家族の話を始める場面もあったという。
介護スタッフの不足や、利用者との世代差による会話のしにくさ。介護現場が抱えるこうした課題に、生成AIを活用しようとする試みは浸透するのか。今回は、RADIO TIME MACHINEの実証結果を振り返りつつ、新たに見えた事業化の壁について考察したい。
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