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1on1は「上司が求める正解」を答えるだけ──本音を言わない社員を変える“いい対立”の作り方河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)

昨今、人的資本経営の潮流のもと、エンゲージメントサーベイや定期的な1on1ミーティングを導入する企業が急増しています。企業があの手この手で社員の「本音」を回収しようとする一方で、なぜ社員の口は重いままなのか。今回は「本音の不発」が起きる構造的背景を解き明かし、企業が目指すべき真の「心理的安全性」についてあれこれ考えます。

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著者:河合薫

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。


 「会社のアンケートや面談で、全て本音で答えている人はわずか10.8%」――。組織改善プラットフォームを提供するyellba(東京都港区)が実施した調査からこのような結果が明らかになりました。

 10.8%という“数字”は、多くの経営層や人事担当者にとって耳が痛いものであると同時に、ある種の「公然の秘密」を浮き彫りにしています。

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会社のアンケートや面談に対して、どの程度本音で回答しているか(yellbaのプレスリリースより引用)

 昨今、人的資本経営の潮流のもと、エンゲージメントサーベイや定期的な1on1ミーティングを導入する企業が急増しています。しかし、現場で起きているのは、皮肉にも「与えられた課題としての回答」であり「持ち時間を差し障りのない会話で埋める」という定型業務の再生産です。

 やっかいなのは、冒頭の調査において「本音を言えない職場(調査では心理的安全性が低い職場と定義)」では、SNSや口コミサイトなどにネガティブな内容を投稿しようと思ったことがある・投稿した経験がある層が45.5%と「本音を言える職場」とした層の約3倍に上った点です。

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「本音を言えない職場」では、社外でのネガティブ投稿の意向・経験が約3倍(yellbaのプレスリリースより引用)

 企業があの手この手で社員の「本音」を回収しようとする一方で、なぜ社員の口は重いままなのか。

 今回は「本音の不発」が起きる構造的背景を解き明かし、企業が目指すべき真の「心理的安全性」についてあれこれ考えます。

本音を言わない社員が「いい人」を演じるワケ

 まずは、現場の声からお聞きください。

 「同期や先輩に、僕、いい人って思われているんです。本当の僕はすごくひどいことを考えていたり、うまくやっているヤツに嫉妬していたりするのに、みんなの前では“いい人キャラ”を演じないといけない」(20代社員)

 「心の中では、『そんなことやっていいわけないだろう』って思っているのに、部下を傷つけたくないからいい上司を演じちゃうんですよね。『ホントにこれでいいのか、いいわけないだろう』と思う自分もいて。何なんですかね、これ」(40代の中堅社員)

 「以前は外資系にいたので、意見を言うのが当たり前でした。でも、今は余計なことを言うと嫌われる。しょせん、中途入社はよそ者ですからね。だから私、自分でもびっくりするくらいいい人なんです」(中途入社の30代社員)

 これらの声は、フィールドインタビューの協力者たちが語った「職場での自分」への嫌悪感です。彼らは皆「いい人」を演じていました。演じないと「受け入れてもらえない」と憂いていたのです。

 その背景にあるのが、組織構造に潜む「心理的非対称性」です。

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