1on1は「上司が求める正解」を答えるだけ──本音を言わない社員を変える“いい対立”の作り方:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
昨今、人的資本経営の潮流のもと、エンゲージメントサーベイや定期的な1on1ミーティングを導入する企業が急増しています。企業があの手この手で社員の「本音」を回収しようとする一方で、なぜ社員の口は重いままなのか。今回は「本音の不発」が起きる構造的背景を解き明かし、企業が目指すべき真の「心理的安全性」についてあれこれ考えます。
企業は社員の「本音」を必要としているのか
人は、明確な敵意や恐怖があるから本音を隠すのではありません。
「こんなことを言って、評価に響いたら面倒だな」
「変にやる気があると思われて、仕事を増やされたら嫌だな」
「過去に中途採用者が正論を言って干されていたな」
といった、言語化するまでもない微細な「リスク回避の防衛本能」が働いた結果として「いい人」の仮面をかぶる。どんなにリーダーや経営層が「本音を言ってもペナルティーはない」と力説したところで、部下たちは「リスクはあってもメリットがない」と判断します。
この非対称性を無視して「さあ、本音をどうぞ」とお膳立てする施策は、期待する効果を得るのが極めて困難です。
そもそも企業は、組織運営において本当に社員の「本音」を必要としているのでしょうか?
「上司のこういうところが嫌いだ」「この制度は不満だ」といった情緒的な本音は、ガス抜きにはなっても、必ずしもイノベーションや業績向上には直結しません。企業が真に回収すべきは情緒的な本音ではなく「現状の施策に対する懸念」や「業務プロセスへの違和感」、つまり「生産的な異論」です。
不確実性の高い現代のビジネス環境において、全員が同じ方向を向いている組織はもろいと言わざるを得ません。現場の違和感、上層部の方針、これまでの前例や成功体験に基づく施策に対する異論こそが、企業の致命的なリスクを未然に防ぎ、新たな事業機会の種になります。
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