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“火葬インフラ”はどうあるべきか 売却報道で注目される東京博善の公共性世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

広済堂ホールディングスが東京博善を米投資ファンドに売却する意向だと報じられた。東京博善は、東京23区の葬儀・火葬で高いシェアを持つ。市民の生活に影響するインフラ事業を誰がどう担うのか。議論すべき問題だ。

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「死者を見送る」営みをどう捉えるべきか

 さらに、根本的な問いもある。火葬は日本人の生活と死生観にとって、欠くことのできない要素だ。ほぼすべての日本人にとって、人生最後の通過儀礼であり、料金、待ち時間、儀礼の質、データの扱いなど、極めて公共性の高い問題だ。ここに外国資本が関与することの是非は、本来正面から問われるべきテーマだ。

 ここで参考にしたいのが、2026年4月22日、アジア系ファンドMBKパートナーズによる牧野フライス製作所の買収計画に対して、政府が外為法に基づく中止勧告を出したケースだ。2017年の外為法改正後では初のケースで、中止勧告自体も約18年ぶりだった。

 牧野フライスの高性能工作機械は、防衛装備品の製造に広く使われており、「軍事転用可能性が特に高い機微貨物を製造し、関連する技術・情報を保有する」ことが「国の安全等に係る対内直接投資」に該当すると認定された。


国内企業のM&Aを巡って、政府が介入するケースもある(画像提供:ゲッティイメージズ)

 類似する論点として捉える見方もある。東京博善の火葬事業は首都圏住民の生活に大きく関わっており、要人に関する個人情報も扱っている。また、海外市場でも活用できるノウハウが蓄積されている。「他の情報と組み合わせることで国の安全に係る機微情報となり得る」という論理が今回のケースにも当てはまるだろう。火葬事業を外為法のコア業種、あるいは経済安全保障推進法の基幹インフラに追加指定することも視野に入れる必要があるかもしれない。

 今回の報道は、単なる一企業のM&Aニュースではない。火葬料金の妥当性や独占の是非、外資規制のあり方、技術流出への備え、そして公共インフラとしての火葬の重要性が関わる問題だ。東京都と政府が連携し、議論を進める必要があるかもしれない。死者を見送るという、最も身近で最も厳粛な営みを、誰がどのように担うべきか。都民とすべての日本人が当事者である。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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