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日本企業の財産をどう守るのか スパイ防止の対策と限界:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
7月の参議院選挙以降、スパイ防止法の議論が話題になっている。日本も防諜機関の活動や法整備によって対策を進めているが、企業の情報が盗まれる事例は多い。スパイ対策を効果的に進めるため、海外の法律なども参考になるだろう。
世界を読み解くニュース・サロン:
本連載は、国際情勢やビジネス動向を深掘り、グローバルな課題とそれが企業に与える影響を分析する。米中関係やテクノロジー業界の変動、地政学的リスクに焦点を当て、複雑な要素を多角的に捉えながら、現代社会の重要な問題を分析。読者にとって成功への洞察を提供していく。
7月20日の参議院選挙から、すでに1カ月以上が経過した。選挙では自民党が大きく議席を減らす一方、参政党や国民民主党が支持を伸ばした。しかし、政権は依然として変わらず、不安定な状況が続いている。
その選挙戦から話題になっていた議論の一つが、いわゆるスパイ防止法だ。スパイ防止法とは、外国のスパイによる国家機密の窃取や、政治・行政への不正な干渉を防ぐための法律である。
スパイ行為はビジネスにも影響を及ぼす。スパイは国の諜報機関などの指示を受けて、日本企業の知的財産を盗んだり、強引に企業を買収したりすることもある。先端技術を狙うロシアのスパイ「ラインX」は有名だ。企業や個人が、自覚のないままスパイ工作に協力してしまうこともあるだろう。
そんなスパイ活動への対策がなされていないとして、日本は「スパイ天国」などといわれる始末だ。実際に日本は、スパイ行為に対して無防備なのだろうか。
まず、筆者もよく聞かれるのが「本当にスパイは日本で活動しているのか」という質問だ。実例をいくつか紹介したい。
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