“火葬インフラ”はどうあるべきか 売却報道で注目される東京博善の公共性:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
広済堂ホールディングスが東京博善を米投資ファンドに売却する意向だと報じられた。東京博善は、東京23区の葬儀・火葬で高いシェアを持つ。市民の生活に影響するインフラ事業を誰がどう担うのか。議論すべき問題だ。
どのような懸念があるのか
重要なのは、KKRへの売却が実現しても、経済安全保障上の議論が続く可能性がある、という点だ。KKRは米国のファンドだが、グローバル投資家として世界各国の機関投資家から資金調達を行ってきた。買収後の経営体制、取締役会構成、データガバナンスの設計次第といえるが、投資家構成や経営体制を巡って議論が続く可能性がある。
今後の経営体制次第では、複数の懸念が残る。第一に、個人情報の問題。火葬場は故人と遺族の膨大な個人情報を扱う。個人情報管理のあり方について、前述の質問主意書でも指摘された。
第二に、要人情報の問題。東京博善の施設は元首相や皇室関係者の葬儀なども担う。こうした情報の管理は重要度が高い。そして第三に、料金や運営方針によって都民の生活に大きな影響を与えかねない、公共インフラとしての影響力の大きさだ。
そして見落とされがちなのが、東京博善が蓄積してきた火葬技術や運営ノウハウの価値である。週刊エコノミストの2020年の記事で、同社の元社員はこう語っている。(関連リンク)
「中国は土葬社会だが、土地不足から共産党の指導で火葬への切り替えが始まっている。中国では火葬インフラ整備が進められており、日本では、民間企業としては先行的に火葬に関する運営ノウハウや技術を蓄積している。中国での火葬事業展開を見越して羅氏が買収に関わったと言われた」
火葬技術とは、単に炉をたく技術ではない。排煙処理、エネルギー効率、遺骨の品質維持、稼働率最適化、衛生管理などを総合した技術で、「死者の尊厳」を保ちながら、短時間で安定的に火葬する必要がある。中国で火葬需要の拡大が見込まれる中で、数兆円規模の市場へ発展する可能性もある。仮にKKRが買収後、中国市場向けに、この技術をライセンス供与や合弁事業の形で展開すれば、日本の技術やノウハウの海外展開につながる可能性がある。
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