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意思決定プロセスを資産化 Salesforceを超えるAI基盤「コンテキストグラフ」の正体(1/3 ページ)

米ベンチャーキャピタルのFoundation Capitalは、AIエージェント時代のエンタープライズソフトウェアにおける新たな競争軸として「コンテキストグラフ」(Context Graph)を提唱する論考を相次いで発表した。

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 米ベンチャーキャピタルのFoundation Capitalは、AIエージェント時代のエンタープライズソフトウェアにおける新たな競争軸として「コンテキストグラフ」(Context Graph)を提唱する論考を相次いで発表した。

 同社のアシュ・ガーグ(Ashu Garg)氏とジャヤ・グプタ(Jaya Gupta)氏の両パートナーが執筆したもので、米Salesforceや米Workdayといった既存の「記録のシステム」(Systems of Record)を超える、意思決定の記録を基盤とした次世代プラットフォームの台頭を予測している。

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米Salesforceなど既存の「記録のシステム」を超える、意思決定の記録を基盤とした次世代プラットフォームとは?(カナダ・トロントにあるSalesforceのオフィス。以下写真提供:ゲッティイメージズ)

BtoCの「行動」からBtoBの「決断」へ

 この論考の出発点は、消費者向けと企業向けソフトウェアの間にある、これまで埋められてこなかった格差への着目だ。米Netflixや米Meta、米Amazon、中国ByteDance(TikTok)らが運営する消費者向けプラットフォームは、ユーザーの行動データを驚くほど細かく記録・分析し「取得→学習→改善→再取得」という好循環を構築してきた。そうすることで数百兆円規模の企業価値を築いたのだ。

 何をクリックし、何を無視し、何を途中でやめ、何が戻るきっかけになったか――その全てがシステムの改善に還元された。

 一方、企業向けソフトウェアは、20年にわたってこれに相当するループを持てなかった。企業の意思決定はボタン一つで完結するものではなく、営業・財務・法務・経営など、それぞれ異なる立場と権限を持つ複数の関係者による交渉の産物だからだ。

 営業はスピードを、財務は利益率を、法務は過去の判断との一貫性を求める。そうした交渉の過程でなされる判断は、これまでシステムに記録されてこなかった。

 BtoC企業が20年かけて積み上げてきたこの仕組みが、BtoB領域でも初めて実現しつつある――。これがガーグ氏らの核心的な主張だ。

Salesforceの死角 システムが残せなかった「判断の理由」

 既存のエンタープライズシステムは「結果」を記録するように設計されてきた。

 割引フィールドには最終値しか残らず、なぜその数字が妥当だったかは記録されない。修正された契約条項には最終文言しか残らず、どの代替案が退けられたかは残らない。クローズしたサポートチケットには解決の事実しか残らず、なぜその対応が選ばれたかは残らない。

 この論考は、ここで重要な区別を導入する。「ルール」と「意思決定の記録」の違いだ。ルールとは「ARR(年間経常収益)報告には公式定義を使え」といった一般的な指針であり、意思決定の記録とは「このケースでは、ポリシーv3.2のもとVP(ヴァイスプレジデント・本部長クラス)承認を経て、過去の類似案件に倣(なら)い定義Xを採用した」という個別案件の具体的な経緯だ。

 AIエージェントが真に機能するためには「ルールだけでなく過去にした判断の経緯へのアクセスが不可欠だ」とガーグ氏らは論じる。こうした判断の記録がこれまで保存されてこなかったのは、単なる技術的制約だけではない。そこから学べるシステムが存在しなかったため、保存する理由自体がなかったのだ。

 意思決定データは仕事の「副産物」として捨て置かれ、メールスレッドや会議の記憶、「Slack」の雑談の中に埋もれたまま消えていった。

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既存のエンタープライズシステムは「結果」を記録するように設計されてきた

なぜ今なのか? 暗黙知をシステムに刻む「3つの変化」

 ガーグ氏らはなぜ「今」なのかの理由として3つの変化を挙げる。

 第1に、企業の仕事が記録しやすい形に変わったからだ。リモートワークや非同期コミュニケーションの普及により、意思決定はコメントスレッド、ドキュメントへの提案、チケット履歴、承認フロー、通話録音といった形で痕跡を残すようになった。かつて誰かの頭の中にしかなかった判断が、ワークフローそのものに記録として残り始めている。

 第2に、LLM(大規模言語モデル)が非構造化データを活用可能にしたからだ。企業は長年、会議の文字起こしやチャットログ、ドキュメントのコメントを保有していたが、それは「検索できる」だけで「学習に使える」ものではなかった。LLMはそこから意思決定の要素を抽出し、システムが活用できる形式に変換することを可能にする。

 第3に、最も重要な変化として、AIエージェントが自動的に意思決定の記録を生み出す。エージェントが25%割引を提案し、営業担当が「競合Xへの対抗が必要」とメモを添えて30%に修正したとき、その編集行為そのものが意思決定の記録になるのだ。

 エージェントの提案は「システムが正しいと考えたこと」の記録であり、人間の修正は「モデルが見逃した判断」だ。エージェントがワークフローに入り込むにつれ、かつては暗黙知だった専門的判断が、承認・修正・例外処理という形で可視化されていく。

© エクサウィザーズ AI新聞

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