なぜスシローはアジアへ、くら寿司は米国へ向かったのか 業績比較で見えた「異なる勝ち筋」(4/4 ページ)
海外展開を加速する回転ずし大手のスシローとくら寿司。しかし、そのアプローチは大きく異なります。アジアで店舗網を広げるスシローと、米国・台湾でブランドを磨くくら寿司。業績と戦略の両面から比較しました。
スシローとくら寿司、海外戦略の今後
スシローとくら寿司は、それぞれ異なる地域で海外事業を成長させてきました。今後の戦略を見ると、スシローはアジアでの店舗網拡大を、くら寿司は米国市場での事業基盤強化を重視していることが分かります。
スシローはアジアで出店を加速
スシローは現在も積極的に海外に出店しています。中国本土や台湾、韓国、タイ、シンガポール、マレーシアなどにも進出しており、2026年3月末時点の海外店舗数は279店舗に達しました。さらに2026年9月期には320店舗超への拡大を計画しています。
また、店舗数拡大と並行して人材育成にも注力しています。現地スタッフやマネジメント人材の育成を進めることで、多店舗展開を支える運営体制の強化を図っています。
さらに今後の展開として注目されるのが米国市場です。海外事業を担当する加藤広慎副社長は、朝日新聞の取材の中で米国で腰を据えて事業を拡大していく方針を示しており、ニューヨーク・タイムズスクエアへの出店計画も発表しています。アジアで培ったノウハウを米国市場でどこまで生かせるかが、次の成長テーマとなりそうです。
くら寿司は米国で300店舗体制を視野に
くら寿司は米国市場への投資を継続しています。米国子会社「くら寿司USA」は、中長期的に300店舗体制を目指しており、今後も年間20店舗前後の出店を続ける方針です。
米国事業は売上高こそ拡大しているものの、新規出店や人件費上昇の影響で利益は安定していません。そのため、今後は店舗数拡大に加え、収益性をどのように高めていくかも重要な課題になります。
また、2026年にはドナルド・トランプ米大統領がくら寿司USA株を保有していることが判明し、大きな話題となりました。業績への直接的な影響は不透明ですが、米国市場における認知度向上につながる可能性があります。
同じ回転ずしでも、海外戦略は大きく異なる
ここまで見てきたように、両社は同じ回転ずしチェーンでありながら異なる成長戦略を描いています。
スシローはアジア各国で店舗網を広げる「面的な拡大」を進めているのに対し、くら寿司は米国を海外成長の起点としながら、台湾を含めた重点市場でブランド力を高める戦略を取っています。
国内市場の成長余地が限られるなか、海外事業は両社の将来を左右する重要な柱となっています。今後は単純な出店数だけでなく、各市場でどれだけ収益性とブランド力を高められるかが競争の焦点となるでしょう。
著者紹介:宮本建一
大阪府立大学経済学部卒。第二地方銀行にて預金・融資業務、消費者金融では債権回収、信用組合においては融資・経理・審査管理に従事。
現在はフリーライターとして、資金調達・資金繰り、銀行融資、ファクタリング等の金融ジャンルを中心に執筆する。
審査・回収・債権管理といった現場経験を踏まえ、制度や数字の解説にとどまらず、実務上の論点や注意点まで整理して提示することを得意とする。
中小企業の資金繰り改善や金融機関対応に関する記事実績多数。金融機関向け通信講座教材の企画・執筆経験あり。
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