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なぜスシローはアジアへ、くら寿司は米国へ向かったのか 業績比較で見えた「異なる勝ち筋」(3/4 ページ)

海外展開を加速する回転ずし大手のスシローとくら寿司。しかし、そのアプローチは大きく異なります。アジアで店舗網を広げるスシローと、米国・台湾でブランドを磨くくら寿司。業績と戦略の両面から比較しました。

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なぜスシローはアジアに、くら寿司は米国から攻めた?

 スシローとくら寿司は、ともにコロナ禍を乗り越えながら海外事業を拡大してきました。しかし、両社が成長の軸としている市場は大きく異なります。先述したように、スシローが中国本土や台湾、東南アジアを中心に店舗網を広げているのに対し、くら寿司は米国と台湾を主戦場として事業を拡大しています。

 同じ回転ずしチェーンでありながら、なぜ両社は異なる地域に経営資源を集中させたのでしょうか。その背景には、それぞれの強みやビジネスモデルの違いがあります。

スシローはアジアで寿司を「日常食」に

 スシローがアジアを重点市場とした背景には、自社の強みである品質とコストパフォーマンスを生かしやすい環境がありました。

 台湾や香港、シンガポールなどでは、日本食や寿司に対する認知度が高く、生魚を食べる文化への抵抗感も比較的小さいとされています。そのため、日本国内で培った商品力や店舗運営のノウハウを大きく変えることなく展開しやすい市場でした。

 実際、中国本土でも寿司人気は高まっており、2024年8月に北京1号店を開業した際には長時間の待ち時間が発生するなど、高い関心を集めました。


「スシロー蘇州中心店」のオープン当日の様子(画像:スシロー プレスリリースより)

 また、スシローの強みは寿司そのものだけではありません。日本国内で長年磨いてきたデータ活用の仕組みも海外展開を支えています。

 同社は皿にICタグを取り付け、レーンを流れる寿司の販売状況や滞留時間をリアルタイムで管理しています。さらに、年間10億件規模の販売データを活用し、各店舗で需要を予測。どのネタをどのタイミングで提供するかを判断することで、鮮度を維持しながら廃棄ロスを抑える仕組みを構築しています。

 こうした日本で培ったオペレーションを海外店舗にも展開することで、高品質な寿司を比較的手頃な価格で提供できる体制を築いています。

 つまりスシローは「寿司を特別な日のごちそうではなく、日常的に利用できる外食へと広げること」が可能な市場としてアジアを選び、成長につなげてきたと考えられます。

くら寿司は米国を成長の起点に「体験価値」で勝負

 くら寿司は2009年に米国へ進出し、海外事業の足がかりを築きました。その後は台湾にも進出していますが、現在も米国市場は海外成長を支える重要な柱となっています。米国市場へ進出した背景には、寿司市場の成長余地に加え、自社独自の店舗体験を差別化要因として生かせる環境がありました。

 当時の米国では、高価格帯の寿司店とスーパーなどで販売される低価格帯の商品との間に大きな空白がありました。くら寿司はその中間に位置するファミリー向けの寿司チェーンとして市場開拓を進めました。

 ただし、米国市場では高い人件費や人手不足が大きな課題となります。そこで強みとなったのが、くら寿司が長年磨いてきた自動化・省人化の仕組みです。

 注文システムや皿の自動回収システム、抗菌カバー「鮮度くん」などを活用することで、店舗運営の効率化を図りながらサービス品質を維持しています。


抗菌寿司カバー「鮮度くん」(画像:くら寿司公式Webサイトより)

 さらに、こうした仕組みは単なる省人化にとどまらず、来店体験そのものの差別化にもつながりました。代表的なのが「ビッくらポン!」です。一定枚数の皿を投入すると抽選ゲームが始まる仕掛けは、子ども連れのファミリー層を中心に支持を集めています。

 つまり、くら寿司は寿司そのものだけでなく、「食事とエンターテインメントを組み合わせた体験」を提供することで米国市場で独自のポジションを築いてきたのです。

 両社の海外戦略を整理すると、スシローは寿司文化との親和性が高いアジア市場を中心に店舗網の拡大を進めてきました。一方のくら寿司は、米国を海外展開の足がかりとしながら台湾にも進出し、独自のテクノロジーや店舗体験を武器にブランド価値を高めてきました。同じ回転ずしチェーンでありながら、「広く展開するスシロー」と「重点市場を深く開拓するくら寿司」という違いが見えてきます。

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