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元CAがDX人材に ANA「機内食サービス」の紙文化を変革、デジタル知識ゼロから始めた「現場視点DX」(2/3 ページ)

「デジタルやITは得意な人の仕事」「私はデジタル人材じゃないから……」――そう考える人は少なくないだろう。しかし、DXの現場で求められるのは技術力やITスキルだけではない。全日本空輸で客室乗務員として働いてきた笠川さんは、デジタル変革室へ異動。現場で培った経験を武器に、アプリの開発に携わっている。

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「書いて、書いて、書いて……」  “紙”主体の機内食サービスをデジタルに

 2022年、笠川さんはCAの資格を有したまま、地上勤務者としてデジタル変革室に異動。2026年には客室乗務職からグローバルスタッフ職(総合職)へ正式に転換した。

 異動当初から携わっていたプロジェクトが、ビジネスクラスの「機内食サービスのデジタル化」だった。

 機内食サービス業務はデジタル化が進んでおらず、効率面でもサービスの質の面でも課題があったという。

 「ビジネスクラスのお客さまは多い時で60人ほど。一人一人にメニューをお見せして、注文を複写式の紙に書いて、書いて、書いて……。それを手作業で集計していました」

 集計後、例えば和食に注文が偏ってしまい、数が足りなかった場合などは、一人一人に謝罪し、注文変更をお願いして回っていた。

 一度頼んだ注文が後から変更になれば、顧客満足度の低下につながるかもしれない。もし、注文を聞いたタイミングでCAが残数を把握できれば、より適切なコミュニケーションを取ることができる。

 このような現場の課題から、機内食サービスのデジタル化プロジェクトはスタート。CA用アプリ向けに、機内食サービスに関する機能を開発した。

 機内食サービス機能では、アプリに「どの座席の人が、どのメニューを注文したか」を入力すると、即座に集計され、他のCAにもリアルタイムで共有できるようになった。

 プロジェクトで笠川さんが担ったのは企画の役割だ。ユーザーサービスを担当する部門やグループ会社のANAシステムズと連携して、作り上げていった。

「軽食」をどう表示する? 現場経験が生んだ、CAならではの発想

 企画を進める中で、CAとしての経験がある笠川さんだからこそ生まれたアイデアもあった。

 その一つが、顧客から受けた機内食の注文を、アプリでどのように表示するかだ。

 当初は、シートマップ(座席表)を表示し、席ごとに注文内容を登録していく仕組みを検討していた。「注文受付前」「注文受付済み」「食事を提供済み」など、サービスの段階に応じて各座席に色が付き、一目で状況が分かるようになっている。CAは、そのシートマップを見ながら配膳の進み具合を把握する。

 しかし、機内食ではメインの食事の他に、顧客が自由なタイミングで注文できる「軽食」も提供している。メインの食事と軽食を、同じシートマップ上で管理すると「どの食事の準備がどの段階なのか」が分かりにくくなると笠川さんは考えた。

 そこで、メインの食事と軽食を、別のシートマップで管理し、それぞれのシートマップはタブで切り替えられる仕様を提案。その結果、アプリを使用しているCAから「進捗が分かりやすい」との声もあったという。現場経験を反映した、CA経験者ならではの提案だった。

 「アプリを通してCAの働き方改善に貢献できたことに、大きなやりがいを感じました」と笠川さんは話す。

 また、日々のコミュニケーションにもCAでの経験が生きているという。

 「CA時代、初対面の人たちとチームを組む上で、相手が何を考えているかを常に想像することを意識していました。認識に齟齬(そご)が生まれないよう言葉を省略しない、丁寧なコミュニケーションを取るなどを心掛けていました。この意識は、プロジェクトメンバーや他部署との連携が求められる現在の業務でも役立っています」

 業務の際に接する相手は、搭乗客から社員に変わった。しかし、現在手掛けている業務も、搭乗客一人一人に提供するサービスに確かにつながっている。そんな思いで、笠川さんは業務に向き合っている。

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