財務諸表だけでは勝てない ブルームバーグ日本トップが語る「非構造化データ」の重要性(2/2 ページ)
デフレからインフレへ経済の潮目が激変した日本市場。もはや過去の数値(財務諸表)を眺めるだけのデータ経営では勝てない。情報の洪水におぼれず、気象や音声などの「非構造化データ」をいかに素早く選別し、リアルタイムの決断に生かすか。金融情報インフラを支えるブルームバーグの日本トップに、情報過多を突破するデータ経営学を聞く。
熟練トレーダーの暗黙知を可視化 地方人材のリテラシーを底上げ
このような変化に対し、金融業界を始めとした日本の組織はどう対応すべきか。ブルームバーグでは、公的機関や金融企業、事業会社に対して、データの収集・分析や業務の自動化などを、先述したターミナルによって提供している。一方で、ノーマン氏は「日本のローカル(地方)の組織経営に大きなチャンスがある」と話す。
「地方は人が足りていないですよね。もちろんテクノロジーも必要ですが、肝心の人がいなければビジネスの活性化もできません。若い人たちが都市部に流れている中で、その数を超えるだけの人材が地方に残らない。これが、非常に大きな課題だと思います。また、日本の若い世代のデータ活用に関する知識やリテラシーは、もっと向上できる余地があるとみています」
地方の人材育成とアプリ開発を通じた実務課題の解決を目的に、ブルームバーグが2025年に実施したのが、産官学連携プログラム「Kyushu Code Crunch 2025」だ。九州大学、熊本大学、広島大学、九州工業大学、立命館アジア太平洋大学の学生と、九州の金融機関がチームを組み、ブルームバーグのデータ分析ソリューション「Bquant Desktop」と金融データを活用して、組織が抱える課題に対する実践的な解決策をデータに基づいて提案する。
大学生は約4カ月にわたって金融市場やデータ分析に関する基礎的な知識を学び、企業の担当者と対話を重ねながら、アプリケーション(アプリ)の企画と開発を進めた。
最優秀賞を獲得したのは、九州工業大学と立命館アジア太平洋大学、それに大分銀行による合同チーム。開発したのは、ニュース関連のデータを活用して金融市場の予測と分析に役立てるという「経験豊かなベテラン(熟練トレーダー)の暗黙知の再現を試みるマシーンラーニングに基づいたアプリ」だった。属人的なノウハウをテクノロジーで可視化し、組織の共通資産に変えるこのアプローチは、あらゆる業界の事業承継・人材育成に共通するブレイクスルーと言える。
グローバルマネーをいかにして引き寄せるか
ブルームバーグは、日本の家計金融資産の半分以上を占める現預金が、マクロ経済の循環へと向かうよう、政府が掲げる「資産運用立国」の推進をサポートしている。金融庁が創設した資産運用フォーラム立ち上げの際に事務局を務めたほか、データの提供や業務の高度化支援を通じて業界の発展に貢献したいと考えている。
ノーマン氏は、海外投資家の視点について次のように分析する。
「グローバルマネーが何を重視するかというと、一つはどれだけ収益を上げることができるかという『リターン』です。もう一つは『スタビリティ』、つまり安全性です。この2つを持っている市場に資金は動きやすくなります。日本市場は現在、まさにこの2つを持っています。政治面から見てもそうですし、マーケットや規制の面から見てもそうです。その結果、活性化された日本のマーケットは、海外投資家から大きな注目を集めているのです」
「日本の家庭が持っている貯金は、世界的にも非常に大きな規模です。ただ、これまでは利率が低いものに多く投資されている現状がありました。その流れを変えて、よりリターンの高い市場にお金が回ることで、最終的には巡り巡って企業の給与が上がるといった良い影響(経済の好循環)をもたらすことが、この取り組みの目的です。資産運用業界の多様化を促し、選択肢が増えるためのサポートをしています」
その上でノーマン氏は、日本市場のポテンシャルや企業の経営層への大きな期待を語った。
「日本は世界をリードするテクノロジーを持ち、米国に次ぐ経済規模を誇ってきた歴史があります。そして今、再び成長期にきていると多くの専門家はみています。しかも、何もないところから始めているわけでなく、技術やインフラなど、過去に積み上げてきた強固なアセットがある上での成長期です。世界的に見ても極めて成熟した、信頼に足る市場だと捉えられています」
「日本は政治的にも安定していますし、実体経済に基づいて活動する素晴らしい企業がたくさんあります。市場にも深みがあり、流動性があり、透明性もあります。政府も市場に投資を呼び込みたいと考えています。これだけの条件がそろっている国は、世界中を見てもなかなかありません。あとは、日本のビジネスリーダーや経営層の方々が自らの可能性を信じることが、真の成長を実現する鍵ではないか、と考えています」
ブルームバーグはターミナルを接点にしながら、金融市場のデータやニュース、取引システム、リスク管理やESGなど幅広い分野で事業を提供している。ノーマン氏は資産運用立国の実現に向けて、世界中にあふれる大量のデータの中から「有用なデータをより早く、より簡単に入手したいという経営層の需要に応え、日本企業の変革を支えていきたい」と話している。
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