「離職の予兆」は見抜けない エースが突然消える“サイレント離職”のメカニズム(3/4 ページ)
自発的退職の多くは突発的なショックが引き金であり、「離職の予兆」を追っても予見は不可能だ。企業が見るべきはどこなのか。
企業が見るべきは「留まるサイン」
離職についての研究は、この20数年の間に「なぜ辞めるか」から「なぜ辞めないのか」、つまり“自社に留まる理由”に軸足を移している。
人とのつながり(信頼できる同僚がいる)、仕事との適合(自分の強みが生かせる)、辞めれば失うもの(築いてきた人間関係や評価)。これら3つに集約される“留まる理由”が厚いほど、人は今勤めている会社に留まりやすい。逆に言えば、つながりが薄く、配属が噛み合わず、辞めても失うものが少ない人こそ危ういということになる。
不満は表に出にくいが、“留まる理由”の減衰は在職中に見える。「雑談が減った」も、退職の予兆ではなく“つながりの摩耗”と読み替えると重要な意味を持つ。マイナビの調査によると、社員が本音を言わない最大の理由は「話しても理解してもらえないと思ったから」だ。「言っても無駄だ」と一度諦められてしまえば、本音は二度と聞けない。
やりがいのある役割、信頼できる同僚、磨かれていく専門性など、“留まる”理由を一つでも多く持つ人は、多少の不満や外部からの誘いでは動きにくい。離職を防ぐことは、社員を鎖でつなぐことではない。留まる理由を一つずつ増やすことにあるのだ。
防げる離職と、防げない離職
家庭の事情や、もとから「この時期に辞める」と決めていた退職は防げないだろう。しかし、人間関係、評価への不納得、不本意な配置など、組織の中に火種があるものは防ぐことができる。前述した“留まる力”が厚ければ、外部から誘われても踏みとどまる。
“防げる離職”を防ぐために必要な要素は、主に3つある。
まず、小さくても意見がちゃんと届くという実感を積ませることだ。調査会社米ギャラップの調査によると、職場におけるモチベーションの約7割は直属の上司で決まるという。
次に、評価や昇給、配置といった社内のショックを、伝え方と事後のフォローまで含めてしっかり設計することだ。同じ「昇進見送り」でも、放っておけば離職につながるかもしれないし、十分な説明と支援が続けば留まってくれるかもしれない。
最後に、納得感と成長実感、職場内の人とのつながりを定点的に測ることだ。「この職場で成長している実感はあるか」「上司の判断に納得できているか」など、“留まる理由”の厚みを定期的に確かめるのである。
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