過去最高「売上高370億円」の大戸屋 創業家の新社長が挑む「次の一手」(1/3 ページ)
かつての赤字からV字回復した定食チェーンの大戸屋ホールディングスが、創業家の新社長の下で再出発する。今後の経営方針について、新旧社長に横浜本社でインタビューした。
売上高370億円──。2026年3月期決算において過去最高業績を記録し、かつての赤字からV字回復した定食チェーンの大戸屋ホールディングス(以下、大戸屋HD)が、創業家の新社長の下で再出発する。
同社は6月22日、前取締役(非業務執行)である三森智仁氏が社長に就任すると発表した。
大戸屋HDに対する敵対的TOB(株式公開買い付け)は2020年9月、外食大手のコロワイドによって実施・成立。これにより大戸屋はコロワイドの傘下に入り、外食業界初の敵対的買収劇として話題となった。
その後、大戸屋は蔵人賢樹前社長の下で再建。健康的な手作り感のあるメニューを提供することで来店客数を増やしてきた。社長交代後も、外食産業の厳しい競争環境の中で、さらに業績を伸ばしていけるか。
「『からだにうまい。』をスローガンに『第3の創業』を目指したい」と意気込む三森新社長の力量が問われる。大戸屋の今後の経営方針について、新旧社長に横浜本社でインタビューした。
三森智仁(みつもり・ともひと)2011年三菱UFJ信託銀行に入行、2013年に大戸屋入社。2015年に常務、海外事業本部長、2016年に退任。2020年に大戸屋非業務執行取締役、2026年6月に社長に就任。37歳(以下、新旧社長の写真はアイティメディア撮影)
最高売上370億円 再建のプロが下した「トップ交代」の理由
蔵人前社長は、このタイミングで社長交代に踏み切った理由を、こう打ち明ける。
「6年前は大赤字の会社でした。(業績が回復した)いまこそ、いろんなことができるタイミングだと思いました。2年ほど前から『次の社長は誰かな』と考えた中で、6年間一緒に仕事をしてきた三森さんが、会社に対する思いを誰よりも強くお持ちだと感じました。安心して任せられるなと思っています」
新たに打ち出したのは「第3の創業」だ。大戸屋の創業者、故・三森久実氏が築いた「第1の創業」。コロワイド傘下で失った顧客の信頼回復と再建に努めた「第2の創業」。そして、創業者の長男である三森新社長を迎えての今回を「第3の創業」と位置付けている。
蔵人前社長は「(この6年間で)ある程度の経営基盤はできました。一段落ということで(コロワイドとしての)私の仕事はここで終わって、私がやらなかったことを三森さんにやってほしい」と新社長の手腕に期待する。
三森新社長に今後何を目指すかを聞くと「答えは現場にあると思います。大戸屋の良いところは残しながら、コロワイドグループのノウハウとリソース(経営資源)を融合させていきたい。奇をてらって何かをするというのではなく、6年間で蔵人前社長が作ってくれたものをベースに考えていきたい」と控えめに話した。
業績面は順調だ。2026年3月期の決算では、売上高370億円と前年同期比17.9%増で、過去最高を記録。来店客数、客当たりの単価も着実に増えたという。
4月には食材価格の高騰や人件費の上昇に対応して、価格を約4%値上げした。しかし、足元の来店客数は伸びているようで、客のリピート率も上昇。いまのところ値上げによる客離れは起きていないという。
業績が順調に伸びてきた理由について、蔵人氏は「サービスの改善を地道に続けてきた結果。健康という軸を貫いてきたことが、時代背景にもマッチしたのではないか」と振り返る。実際にコロワイドグループに入ってからは、食材の仕入れの効率化、店舗運営の標準化、メニュー改定によって収益性は向上し、コロナ禍後から業績は大きく改善した。
コロワイドのインフラ活用 「店内調理」と合理化の境界線
コロワイド傘下に入った時に注目されたのが、大戸屋の売りだった「店内調理」という、手間がかかる調理方法が維持できるかどうかだった。
店内調理を維持したい大戸屋側の強い意向に対して、合理化を追求して経費を抑えたいコロワイド側の対応が注目された。蔵人前社長は、店内調理の基本方針を残した経緯を説明する。
「コロワイドのセントラルキッチン(CK)を使って、経営を改革していくと周囲からは思われていました。ですが、大戸屋らしい店内調理を強みとすることも必要だと判断しました。良い食材を使って調理することは捨てずに、手間がかかる店内調理を残すことにしました。一方、あまりインパクトのない食材の調理はCKを使っていくような、店内調理とCKとのバランスを取っていくのが一番大変なところでした」
三森新社長も「私も(運営を)見てきましたが、ほぼ変わっていません」と基本路線が維持されたことを確認している。
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