2015年7月27日以前の記事
検索
ニュース

生成AI「若手有利」は大間違い? ミドル層が勝ち抜くための“力の見せ所”とは(1/3 ページ)

新しいテクノロジーは若い世代のもの──生成AI時代において、この構造が大きく変わろうとしている。つまり、業界に長く向き合ってきたミドル層にとって、大きなチャンスといえる。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

著者プロフィール・村上悠太(むらかみゆうた)

murakami

株式会社ディープコア KERNEL事業部 部長 Senior Director, Community & Venture Growth

ソフトバンクで採用・人事企画を経て、2018年よりDEEPCOREに参画。同社の人事全般を統括しつつ、投資先AIスタートアップの採用・組織開発等のHR支援を推進。2023年にスタートアップキャリアコミュニティ「LINKS by KERNEL」を設立し、約500名の会員にキャリア支援を提供。起業家やスタートアップ参画希望者に対し、コーチングなどの支援を行う。スタートアップを主な対象に、組織開発・チームビルディングの講演・研修・ワークショップなどを実施し、2026年よりスタートアップの人・組織の壁を越えるプログラム「SYNCLE」を立ち上げ。現在はAI特化型インキュベーション拠点「KERNEL」の事業部長として、起業支援および投資先スタートアップ支援を推進。

BCS認定ビジネスコーチ、米国Gallup社認定ストレングスコーチ。


 インターネット、PC、スマートフォン──過去を振り返ると、新しいテクノロジーは長らく若い世代のための存在だった。

 新しいテクノロジーが登場すると、上の世代には、それまで身に付けたスキルを手放す「アンラーニング」が求められてきた。一方、アンラーニングが不要な、知見が少ない若い世代にとって、新しいテクノロジーは純粋な追い風となった。

 新しいテクノロジーの普及は、いつも「新しい世代が上の世代を置き換えていく」という文脈で語られてきた。ところが、生成AI時代においては、上の世代が有利になる、逆転現象が起きている。

 企業の競争優位の源泉は「解くべき課題を見つける力」と「解く力」の掛け算にある。

 ここでいう「解く力」とは、課題解決に必要なサービスやプロダクトを開発し、実装していく力を指す。例えば、人事の採用担当者は「候補者の情報が採用媒体ごとにバラバラに管理され、全体を把握できない」という課題を、誰よりもよく知っている。だが、それを一元管理する仕組みを自分で作ることはできず、エンジニアの手を借りるしかなかった。

 このように、これまで「解く力」を持っている人は、一部に限られていた。やりたいことがあっても、それを形にする技術力や実装力がないとその先には進めない。必然的に、新しい事業を作れるのはそうした層に絞られていた。

 加えて「解く力」は、新しいスキルへの習熟度合いで決まっていた。これは「アンラーニング」が不要な若い世代にこそ有利な勝負だった。

 しかし、生成AIは「解く力」をコモディティ化しつつある。コードを書く、プロダクトを開発するといった、かつては専門スキルを要した作業も、生成AIの力で誰でも一定の水準でこなせるようになった。

 その結果、企業の競争優位の源泉は「解くべき課題を見つける力」にシフトしつつある。これは、業界への知見や実体験の蓄積がものを言う領域だ。つまり、業界に長く向き合ってきたミドル層にとって、大きなチャンスといえる。

新規事業での仮説検証から見る、ミドル層のチャンス

 新規事業を例に挙げよう。新規事業では仮説検証を繰り返しながら事業を成長させていくが、その過程で直面しがちなのが「PoCの壁」である。

 PoCはProof of Concept(概念実証)の略で、新たな製品やサービスを開発するにあたり、それが技術的に実現可能か、それに顧客がいて事業化可能かを確かめる検証を指す。新規事業において、この壁を越えられるかどうかが、その後の事業成長を左右すると言われる。

 PoCは実際の顧客企業と組んで実施することが多く、大きく分けて2つの仮説を検証する。一つは「技術検証」で、狙った性能の製品やサービスが、技術として実現できるのか、事業として成り立つコストで作れるのかという、作り手側に立った仮説検証だ。

 もう一つは「顧客検証」で、その製品を必要とする顧客が実際にいるのか、その顧客が抱える課題は、対価を払ってでも解決したいものなのかという、使い手側に立った仮説検証である。

 前者の「技術検証」は、想定通り動いたかどうかなど、白黒つく形で定量的な結果を得やすい。一方で、より検証の不確実性が高いのが「顧客検証」だ。

 特定の顧客企業とのPoCにおいて、事前の目標値を8〜9割の精度とし、検証の結果それを上回ったとする。大切なのはその先のプロセスだ。 

 顧客仮説の核心は、その成果を実際の業務に組み込んだとき、仕事の流れがどう変わり、現場がどう受け入れ、変化にどれくらいの対価が払われるのか、という「PoCの先」にある。仮に8〜9割の精度が出せたとしても、残りの1〜2割にクリティカルな問題が見つかったり、いざ実装に落とし込む段階で初めて課題が見えてきたりすることもある。

 この顧客仮説の検証を、業界の未経験者だけで進めるのは、非常に難易度が高い。そこで大事になるのが、業界知見を持った人の存在だ。

 どの業界に、どんな未解決課題があるのか。誰が本当に困っていて、その解決にいくら払う価値があるのか。こうした問いは、デスクトップリサーチで分かるものではない。その業界の商習慣や現場の動き方を知り、外からは見えない業界の事情を体感してきた人にしか、解像度高く見えてこない。

mrkm
生成AI時代のパラダイムシフト(著者作成)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る