生成AI「若手有利」は大間違い? ミドル層が勝ち抜くための“力の見せ所”とは(3/3 ページ)
新しいテクノロジーは若い世代のもの──生成AI時代において、この構造が大きく変わろうとしている。つまり、業界に長く向き合ってきたミドル層にとって、大きなチャンスといえる。
「経験」という資産を、どう生かすか
これまで蓄積した経験こそが、競争優位の源泉に直結する武器になりつつある生成AI時代において、ミドル層にはどんなチャンスがあるのか。2つの考え方がある。
(1)社内のプロセスを作り変える
一つは、今いる会社の中で、業務やプロセスをAIで作り変えていく道だ。
生成AIの力によって、今や誰もが「シチズン・デベロッパー」(IT部門に属さない業務部門の人が、自らツールやアプリケーションを作ること)になれる時代になった。「こういう業務を効率化したい」と伝えるだけで、実際に動くツールを作ることができる。
ここで重要になるのが「何を作るべきか」を考えることであり、それには「業務のプロセスにいかに習熟しているか」が鍵になる。
どの作業に無駄が潜んでいるか、どこを変えれば現場が動くか。長年その現場に携わってきた人ほど、的確に捉えることができる。こういった人材こそが、社内のプロセスの変革のキーパーソンなのである。
(2)会社の外に踏み出す
もう一つは、会社の外に出て、自分の経験を直接事業にする道だ。
スタートアップには、実用最小限の試作品(MVP)を素早く作り、実際に人に見せ、反応を得て改善を重ねるという定石がある。粗くてもプロダクトのデモ画面をまず形にして、身の回りの人に見せてみる。そこで得られるフィードバックこそが、事業構想の何よりのヒントになる。
そのため、かつて、AIやテクノロジーを軸にしたスタートアップは、高度な技術力を持つエンジニアでなければ立ち上げられなかった。しかし、これまでエンジニアの手を借りなければ難しかったこうした試行も、AIの力で、非エンジニアの人でも、自ら進められるようになってきた。事業を立ち上げる初期コストは、かつてとは比べものにならないほど下がっている。
その環境下で、競争優位の源泉になるのは「解くべき課題を見つける力」であり、業界知見や経験が鍵となる。どこに未解決の課題があり、誰が本当に困っているのか。長年その世界に身を置いてきた経験そのものが、新しい事業の種を見つける力になる。
起業の担い手は、若い世代ばかりではなくなっている。帝国データバンクが実施した調査によれば、2025年に新たに設立された法人の代表者の平均年齢は48.9歳と、2000年以降で最も高くなった。年代別でも40代が最多を占め、若い層に限られたものではなくなってきている。生成AIの力で、ミドル層にとっての起業のチャンスは今後より大きく広がっていくのではないか。
最初から大きく踏み出さずとも、まずは副業やサイドプロジェクトで小さな一歩を踏み出しても良い。これまで蓄積した経験を事業という形にするチャンスが広がっている。
生成AI時代のイノベーションの鍵を握るのは、「経験」という資産をどう生かすかだ。それは個人のみならず、企業にとってのテーマでもある。
経営層に求められるのは「現場の社員が、自らツールを作れる時代になった」と認識し、実際にやってみようと社内に発信することだ。
例えば、デザイン会社のグッドパッチでは、経営トップの号令のもと、事業部の全社員が「AIでアプリを1つ作り、公開までやり切る」ことに挑んだ。さまざまな職種の社員が自分の業務課題を解くツールを自ら作り、コーディング経験のない社員を含め、86%が公開までたどり着いた。社員たちは、この体験を通じて「自分の負から始めると強い」「作れるかどうか、ではなく、何を作るかが問われる」という気付きを得たという(出典:グッドパッチCEO土屋尚史氏のnote「全社へのClaude Code大号令」)。
経営層が後押しし、経験を持つ現場の社員が一歩を踏み出す。この両輪を回すことが、生成AI時代の変革の出発点となる。
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