「よく眠ること」が競争力になる? 企業を変えるスリープテックの現在地:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
「スリープテック」を健康経営や商品・サービスに活用する動きが広がっている。特に、企業向けの睡眠改善プログラムなどを導入し、睡眠改善や仮眠を生産性向上のために活用する企業が増えている。
「効率的な睡眠」が企業の競争力に
日本のスリープテックがユニークなのは、「衣類」「食品」「住環境」といった生活関連分野と強く結びついている点だ。
リカバリーウエア市場では、ベネクスが遠赤外線による血行促進ウエアを提供。Refa(リファ)などのブランドを展開する美容・健康機器大手MTGは、8種の天然鉱石を配合した血行促進繊維を用いたリカバリーウエアの新ブランド「ReD(レッド)」を立ち上げ、一般医療機器として展開している。TENTIAL(テンシャル)やワークマンなどもこのカテゴリーの製品を展開し、スポーツやビジネス、日常利用まで裾野を広げている。
食品では、GABAやL-テアニン、乳酸菌などを配合した「睡眠の質の改善」を訴求する飲料やサプリメントが機能性表示食品制度を追い風に市場拡大し、広く流通するようになった。住環境では、睡眠計測サービスなどを利用して自宅で睡眠データを継続的に記録し、寝具や生活習慣の改善につなげる取り組みも始まっている。
ただ、課題もある。国内スリープテック市場は今後数年で数百億円規模へ拡大するという予測がある一方、データの相互運用性、そして医療とウェルネスの境界という2つの課題が残る。
ニューロスペースのプラットフォームでは、API連携により他社のデバイスとの接続を目指しているが、現状はスマートウオッチ、マットレス、リング、アプリなどが別々のエコシステムで動いているため、ユーザー単位の統合分析はまだ限定的だ。
さらに、S'UIMINのInSomnografのように、医療機関への受診を前提にしたサービスも増えているが、医療行為との線引きと個人情報保護の枠組みをどう設計するかは、制度面の課題である。
睡眠は、人生の3分の1を占めるにもかかわらず、関連市場にはなお大きな成長余地がある。「24時間戦う」ことが企業競争力とみなされた時代を経て、日本社会は今、「いかに効率よく、深く眠るか」という質の高さを競う局面に移りつつある。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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