AIに企業理念を宿せるか? スポーツ小売り・ヒマラヤ、接客ノウハウまで学習した「AI副店長」開発の舞台裏(2/4 ページ)
スポーツ用品店をチェーン展開するヒマラヤ(岐阜市)は「アイダ つなぐ」と名付けた“AI副店長”を6月から全99店舗に導入した。同社店舗運営部の金丸智功氏(部室長代理)とヒマラヤスポーツ本館店長の高島雅央氏に、AI副店長開発の舞台裏を聞いた。
学ばせたのは「答え」ではなく「考え方」
金丸氏が目指したのは、単純なマニュアル検索ツールではない。「マニュアルの内容を答えるだけではなく、お客さま第一主義の考え方を盛り込んだ回答ができることを重視した」(金丸氏)
例えば、現場スタッフから「購入履歴が確認できない商品の返品はどう対応すればよいか」と尋ねられた場合、AI副店長は単にルールを示すだけでは終わらない。
「まずお客さまの立場に立ってもう一度考えよう」
「購入履歴を一緒に探す姿勢を見せることが大切」
といった考え方まで返答する。経験の浅いスタッフでも「顧客のためにどう行動するか」という視点を自然に学べるよう工夫しているという。
ベテラン3人へのヒアリングで暗黙知を言語化
こうした考え方をAI副店長に落とし込む作業は、簡単ではなかったという。
一般的に、接客のノウハウや臨機応変なトラブル対応といった非構造データを、AIに学習させることは難しいとされている。同社はこの難題を、ベテラン社員への「ヒアリング」と「徹底的なチューニング」で突破した。
開発では、まず長年現場を支えてきたベテラン社員3人に、数回にわたるヒアリングを実施。1回当たり1〜2時間に及ぶ聞き取りを重ね、接客時の判断や心構え、さまざまな場面での対応方法を掘り下げていった。中でも、創業当時から働く社員への聞き取りでは、過去の顧客対応事例まで収集できたという。
ヒアリング対象者の一人である高島氏は「シチュエーションごとにどう対応するか、考え方も含めて細かく聞かれた。普段自分が何気なくやっていることを改めて言葉にする機会になった」と振り返る。
さらにTHAの担当者も実際に店舗を訪れ、スタッフによる接客を体験。他社との違いや現場の雰囲気も含めてAI副店長へ反映した。
こうして集められた膨大なデータを基に、金丸氏が率いるプロジェクトチームが毎日のように回答内容を確認し、チューニングを続けた。
チューニング期間は当初1カ月程度を見込んでいたが、実際には約3カ月にわたった。「『お客さま第一主義』からずれていないかを一つずつ確認し、修正を重ねた」と金丸氏は話す。約1年をかけて、AI副店長は実装にこぎつけた。
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